BS-TBSで放映された大型時代劇スペシャル『徳川家康』を鑑賞。1988年元日にTBSで放送された時代劇ドラマ。制作は東映で降旗康男が監督を務めている。主演は松方弘樹。
桶狭間の戦いから関ヶ原の戦いまでの徳川家康(松方弘樹)を中心に、織田信長(山城新伍)、豊臣秀吉(緒形拳)、そして家臣・石川数正(千葉真一)を混じえながら壮大なスケールで戦国時代が描かれる。
主演の松方弘樹は、女に目がなく弱気なところもある家康をコミカルに演じながら、決めるところは決めて天下人の貫禄を示す芝居もこなしている。この両面を見事に演じ分けていて見応えがある。
他には緒形拳が演じる秀吉の臨終にも注目したい。緒形はすでに大河ドラマで『太閤記』(1965年)と『黄金の日々』(1978年)で秀吉役をやっているが、このドラマでの派手な死に際もなかなか見せてくれる。
また石川数正役の千葉真一は何から何までカッコいいことにも注目したい。徳川家を出奔後、第三者として関ヶ原の戦いを観戦して途中で戦いに巻き揉まれて落命するのは、「えっ」と思ったがフィクションなのでいいことにしよう。石川数正は好きなキャラクターなのだが、現在放送中の大河ドラマ『真田丸』でももっと活躍してほしいのだが……。
こうした戦国モノは史実から極端に逸脱できないのでどうしても既定路線にならざるを得ない。なので女性絡みの設定が腕の見せどころだろう。今回は、くに(立花理佐)という女性がカギに握っている。本作のアイドル枠だ。
戦災孤児のくにを家康の正室の築山殿(十朱幸代)が拾ってきて侍女にする。築山殿は武田家への内通疑惑で信長の怒りに買い、家康の嫡子・信康(野村宏伸 )は切腹に追い込まれる。史実では築山殿は家康の家臣により殺害されたとされているが、本作では自刃して石川数正が介錯している。その顛末をくにが間近で見ていて家康に恨みを抱くようになるという設定だ。
その後、くには念仏踊りの女・右京(名取裕子)として再登場する。立花理佐から名取裕子とは変わりすぎだろう。右京は美貌に物を言わせ復讐のため家康に近づくが、なぜか家康の寵愛を受けて一子を設けるという謎の展開だ。まあ美人だから仕方ない。劇中に松方弘樹と名取裕子の濡れ場があるが、これは松方のアドリブだろうと思われるシーンがあり名取の表情がちょっと面白い。
さて最後に、このドラマでは謎のモザイクのシーンがあったので触れておきたい。戦災孤児だった、くに(子役)が拾われてきて築山殿の屋敷で全裸で水浴びをさせられるシーンである。児童ポルノへの配慮だろうが、以前は正月ドラマとしてお茶の間に流れていたシーンがいまや放送コードに触れるとは時の流れを感じてしまう。