浦沢直樹によるプロテニスを題材にしたスポーツ漫画『Happy!』(完全版:全15巻)を読了しました。1993年から1999年にかけて『ビッグコミックスピリッツ』に連載されたいたので、ちょっと青年向けのエッチな表現も目立ちます。
今年の冬に見に行った「浦沢直樹展 描いて描いて描きまくる」(世田谷文学館)で『Happy!』が読みかけになっていたことを思い出し、それ以来気になっていた作品です。誤解を恐れずに言えば、『YAWARA!』のテニス版とも言えるスポーツ漫画。両親と死別し、幼い弟妹の世話をする高校3年生・海野幸が、兄の残した借金を返済するためにプロのテニスプレイヤーを目指すというストーリーです。
最終巻(第15巻)のあとがきに、1993年に『YAWARA!』の連載が終了時に、ビッグコミックススピリッツ編集部から、もう一度スポーツ物を描くように要請された経緯が書かれています。作者本人にとっても「影の薄い作品」になってしまったと懐述しています。一大ブームを巻き起こした『YAWARA!』と比べると仕方ないのでしょうが、この作品も捨てたものではありません。数か月間にわたり面白く読みました。
ヒロインの海野幸のピュアな魅力もさることながら、普段はテニス界のアイドルとして表面的には可愛らしく振舞っているが、実は悪魔のような本性をもったヒール役の竜ヶ崎蝶子の存在感が突出しています。本当に憎たらしい。とくに本性を表すときの顔の表情の変化に高い画力はさすがです。
私は少しばかりテニスを少しばかりやっていましたが、テニス自体の描写も迫力があり、よく描けているなと感じました。もっとも漫画にあるように、プレーヤーがボールを追いかけてゴロゴロと転げまわることはありませんが。
またラストの急展開は想像を超えていました。ウィンブルドンの決勝戦に合わせて漫画を終わらすにはこうなるのかと驚きましたが、大団円で納得できました。
未読の方は一度手にとってみてはいかがでしょう。
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