退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

コミック『サンクチュアリ』を読み終えた。熱い漢たちの生き様に感動

1990年から1995年にかけて『ビッグコミックスペリオール』で連載されたコミック『サンクチュアリ』(原作:史村翔、作画:池上遼一)を読了。文庫版全8巻。

サンクチュアリ [文庫コミック] (1-8巻セット 全巻) [コミック]

戦乱のカンボジアで生き残り、日本に帰国した北条彰と浅見千秋の二人が、腐敗した日本を表(政界)と裏(裏社会)から変革すべく立ち上がる。しかし、その二人に前に大物政治家・伊佐岡が立ちふさがる……。

熱い漢たちの生き様に感涙必至。極道漫画と政治漫画を融合させたスケールの話はユニーク。青年誌らしく「女性の裸体」が随所に挿入されているのは、いまのコンプライアンスからするアウトなのだろうが、これが許容されていた時代なのだったのだろう。懐かし青年誌の趣が感じられる。この点では渡海の女好きがいい味になっている。

強烈なのは何と言っても与党・民自党幹事長の伊佐岡である。強大な権力を持ち、キングメーカーとして日本の政治を操る。背が低いのはキャラ設定が強い印象を残す。ちなみにモデルは金丸信だという。現実の日本にもこうした政治家はいなくなり、小物ばかりで大丈夫かいなと思ってしまう。

極道パートと政治パートが絡み合って進行していくのは原作の妙だろうが、主人公二人が目指す日本というのが見えてこないのが難点。浅見は首相公選制を中止とする憲法改正を主張する。国民の政治への関心を高めることにで、有権者に責任を感じさせることがねらいだという。それはそれでいいが、二人は日本をどのような国にしたいのかという考えが最後まで見えてこない。

結局、憲法改正を目前に、浅見はカンボジア時代に浴びた枯葉剤の影響で死亡してしまうう。唐突な幕切れで「えっ」と思ったが、大風呂敷を広げすぎだろう。それでも読み応えがありなかなか楽しめた。

漫画とは離れるが文庫版の表紙がつまらないのは不満。登場人物を描くなどもうちょっとなんとかならなかったのか。また巻末に当時の政治状況など解説があればもっとよかっただろう。