史村翔原作・新谷かおる作画によるコミック「ファントム無頼」(文庫版・全7巻)を読み終わりました。「週刊少年サンデー増刊号」で1978年から1984年にかけて連載された作品です。懐かしい。
ファントムというのは、かつての航空自衛隊の主力戦闘機「F-4EJ ファントム」のこと。この戦闘機が複座(二人乗り)なのが肝。バディものにぴったりな設定になっています。腕はいいが性格に難があり、「基地の問題児」と浮いていたパイロット・神田鉄雄二等空尉と、ナビゲーター・栗原宏美二等空尉の両名は、なかばヤケの基地司令の思いつきでコンビを組むことに。このふたりは互いの技量を認めつつ意気投合して、それ以来コンビを組んで大活躍する、というストーリーです。
百里基地を舞台にしたファントムの搭乗者を主人公とした漫画ですが、空自の実情をシリアスに描くというより、むしろ空自基地を舞台にして登場人物の味わいのあるキャラクターを楽しむ、エンターテイメント性の濃い漫画作品です。
F-15やゼロ戦と空戦したり、アメリカに出張時には大統領を救出したり、米軍空母に着陸したり、なんでもありの「こんなのありえねぇ〜」というエピソードが満載されていますが、楽しいければいいのです。
作品終盤では、次期主力戦闘機のF-15が配備されて搭乗員の転換が進む様子が描かれています。F-15は単座なので、コンビはどうなるのか気を持たせるくだりはなかなかいいですね。連載当時はすでにファントムはロートル扱いだったそうで、作品にも機体のトラブルを扱ったエピソードがいくるかあります。
今回、さすがにファントムは退役済みだろうと調べてみると、いまだに百里基地にファントムの飛行隊が1つだけ残っているようです。2021年あたりに退役予定とのこと。ちょっとびっくりしました。
米国本土の米軍基地に出張した主人公が、格納庫の片隅にホコリをかぶっているF-4に搭乗して大活躍するエピソードがありました。当時、米空軍ではF-4はすでに退役済み。それを令和になった現在でも現役で使っている航空自衛隊て……。
余談ですが、F-4は東西冷戦下に活躍した戦闘機のベストセラー。多くの国で運用されていました。かっこいいなと思っていると、Amazonプライム・ビデオで「解体!F-4ファントム戦闘機」(2010年)という、解体されるファントムを追うドキュメンタリーを見つけました。ドイツ空軍に部品取りされたり、米軍では訓練用の標的にされたりするファントムが登場します。
「ファントム無頼」を読み終わってから観るとより一層味わいがあります。