退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ゴジラ-1.0』(2023) / 山崎貴による令和ゴジラ

近くのシネコンで映画『ゴジラ-1.0』(2023年、脚本・VFX・監督:山崎貴)を鑑賞。この表記で〈ゴジラマイナスワン〉と読ます。『シン・ゴジラ』以来7年ぶりとなり、ゴジラ生誕70周年記念作品。主演は神木隆之介

【映画パンフレット】 ゴジラ-1.0 GODZILLA -1.0 監督:山崎貴 出演:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介 マイナス ONE

太平洋戦争末期、海軍パイロットである主人公・敷島(神木隆之介)は特攻に出撃するも逃亡して大戸島の守備隊基地に不時着する。そこで敷島は基地を急襲するゴジラに遭遇する。応戦虚しく部隊は壊滅し多くの犠牲者を出す。そして戦後。焦土と化した東京で戦争に深く傷ついた人々が暮らしていた。そこに巨大化したゴジラが上陸し、蹂躙の限りを尽くす。人々はゴジラに抗うことを決意するが……。


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この映画の最大の特徴は、人間ドラマとゴジラパートがうまく融合されていることだ。これまでのゴジラシリーズは人間ドラマが付け足しのようになっており、登場人物の背景が十分に描かれないことが多かった。とくに前作『シン・ゴジラ』では、意図的に人間ドラマが捨て去られていた。

特撮ファンのなかには、「人間ドラマなんてどうでもいいから、ゴジラが暴れてるところをもっと見せろ」という声もある。しかし一般観客をターゲットにして興行成績を上げようとすると、人間ドラマが欠かせないということだろう。本作では、敷島と偶然出会った典子(浜辺美波)と戦争孤児である女児と3人で擬似家族を営む姿が印象的だった。まるでハリウッド映画のように家族を軸に人間ドラマを展開している。海外展開を睨んでの演出プランだろうか。

ただし、肝心の人間ドラマは説明過多でどうも締まりがない。なぜすべてを劇中で説明する必要があるのか。これぐらいしつこく説明しないとわからないマスがターゲットなのか。最近のテレビドラマでも同じことを感じることも多い。本作では意図的にそうしたのかとも思うが、改善の余地がある。

このように人間ドラマ中心で映画にするならば、特撮監督を別に立てて、これまで普通の映画を撮っていた他の監督にもチャンスがあるかもしれない。

次に映像について触れる。山崎貴監督の専門分野のVFXは本当にすばらしい。本作では海上戦闘がメインに展開する。素人ながら水のVFXは難しいと想像するが、実写とVFXが見事に組み合わせていて映像は素晴らしい。日本でもこれだけの映像表現ができるようになったのは驚きである。

正直、山崎貴監督がゴジラを撮ると聞いたときは、「大丈夫かな」と思ったが、まったくの杞憂であった。監督と彼のスタッフのこれまでのキャリアが凝縮されている。時代を戦後直後に選んだのは『ALWAYS 三丁目の夕日』、局地戦闘機震電」が活躍するクライマックスは『永遠の0 』、海上戦闘の場面は『アルキメデスの大戦 』、それぞれの経験が活かされている。とくに『アルキメデスの大戦 』冒頭の戦艦大和の沈没シーンを見た時は、特撮大作撮ってほしいなと思ったのが、まさかゴジラを撮るとは思わなかった。

ハセガワ ゴジラ-1.0 日本海軍 九州 J7W1 局地戦闘機 震電 劇中登場仕様 1/48スケール プラモデル SP579

怪獣映画は映画館で観るのをモットーにしているので、今回もシネコンに出かけた。大スクリーンで観る価値のある映画である。ぜひ映画館で観てほしい。