最近、「地政学」という語をよく耳にするが、この本では地政学を「世界で起こってきた戦争の歴史を知る」ことと定義したうえで、中国、ロシア、ヨーロッパ、アメリカと世界を4分解して、それぞれの戦争の歴史を解説している。
構成は次のとおり。それぞれの4つの地域について概論を述べて、続いて戦争の年表を提示する。そのうえで個々の戦争について解説していくというもの。わかりやすい構成でとても読みやすい。いずれも世界史に習ったような内容だが、このように並べ替えて地図と併せてみるといろいろなことが分かってくる。
ただし「図解」とタイトルで謳うわりにはハッチなど見にくい地図があるのは難点か。主要な地図についてはカラーで図示するとよいだろう。
また気になったのは「日本の現状と今後を考える」という最終章である。日本の安保法制に触れ、ここまでの地政学的な分析から集団的自衛権が必要なのは自明と結論付けているのは引っかかる。著者が頭がよいのですぐに自明ということになるのだろうが、凡庸な読者に対してはもう少しかみ砕いた解説が必要だろう。