文化放送のラジオ番組「オトナカレッジ」で好評を博した「茂木誠の世界史学科」の書籍化。ラジオ番組で地政学を講義するにしても地図はどうしたのかと思ったが、番組ツイッターでネットに流していたとのこと。
ラジオ番組が基になっているので、筆者と聞き手の文化放送の砂山圭大郎アナウンサーとの対話形式で進行する。対話形式を読むのは苦手だが、この本は比較的に読みやすい。すぐに読み終えるので気軽に手に取ってみてほしい。
プロフィールによれば筆者は大学受験予備校講師でiPadを駆使した独自の視覚的授業が好評とのこと。その教材を活用したものだろうか、ディフォルメされた地図が面白い。図だけZIPでまとめてくれと言いたくなるほど。
ただ本来はカラーなのだろうが白黒なのは残念。いっそのことイベントにより領域や矢印などがアニメーションで動けばもっと分かりやすいだろうとも感じた。
いちばん印象に残ったのは、難民・移民に触れた箇所で地方から上京する人たちも「移民」ではないかという指摘。聞き手は山口県出身で大学進学時に上京しそのまま東京で就職したらしいが、それに対していい仕事やいい生活を求めて東京に住むことを選んだのは「移民」であると看破している。これはなるほどと思った。
年末年始で帰省する人も多いだろうが、地方の寂れた様子を見るとほとんど別の国に思えることもも少なくない。そういう意味では「移民」というのは的外れな表現でもないように思えた。
難民とも移民とも区別がつかない人たちが大挙して欧州に向かうのを指して、「自分の国を自分たちでなんとかしようとする気概はないのか!」としたり顔で避難する人たちがいるが、少なくとも地方から上京してきた人にはそう言う資格なないなあ、と思った次第。
【関連記事】