退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

よしながふみ「大奥」が日本SF大賞に決まる

よしながふみによる、少女漫画「大奥」(全19巻)が第42回日本SF大賞に選ばれた。このニュースを聞いてもあまり驚かなかったが、SFとしてガチで評価されてよかったと素直に思った。

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ジャンル分けするのが難しい作品だが、時代劇でもあり、歴史改編SF、またジェンダー作品とも言えるだろう。2010年に実写映画化され、2012年にテレビドラマと続編映画が製作された。終盤の幕末編もいずれ映画化されないだろうかと期待している。

日本の江戸時代をモデルとした世界観。謎の疫病で男子の人口が急速に減少した社会において、統治機構の構成員が男性から女性に移っていく。この状況を背景に江戸城の大奥を中心に数々の歴史的出来事を描く。

私自身は、昨年秋に全巻読み終わった。ちびちび読んでいたこともあり5年ぐらいかかっている。どちらかというと読むのに骨が折れるマンガである。歴史上では男性である人物が女性に、女性である人物が男性に置き換えられているため、人物相関が実にややこしいことも一因である。

とにかく全編を通して、大胆な発想と緻密な物語構成には舌を巻く。すでに高い評価を得ている作品でとくに言うこともない。

内容が秀逸なのは言うまでもないが、エラいのはきちんと完結させたことだ。史実をベースにしているので、慶喜の時代である幕末に向かい、明治維新により大奥が廃止される流れで物語が収斂していくのは必然である。

それでも長編マンガを完結させたのはエラい。意外に思うかもしれないが、泰斗であっても読者をほっぽりだして未完で放置する漫画家があまりにも多い。そういう業界なんだよと言われれば、そうかもしれないが困ったものだ。

大奥【通常版】 19 (ヤングアニマルコミックス)