年末年始は過去に放送された時代劇が大量に再放送されるので、時代劇ファンにはうれしい時期です。年末に再放送された「影武者 徳川家康」もその中の一本。隆慶一郎作の時代小説が原作です。
この「影武者 徳川家康」は、2014年に「新春ワイド時代劇」の枠で、テレビ東京開局50周年特別企画番組として放送された時代劇ドラマです。ワイドというだけあって5時間ドラマで見応えがあります。
このドラマは「関ヶ原の戦いで徳川家康は石田三成方・島左近が放った刺客により暗殺されていた!」という、いわゆる「歴史のIFシナリオ」です。家康が討たれたことが知られれば形勢不利になると考えた徳川の側近たちは、家康の影武者・世良田二郎三郎(西田敏行)を「家康」に仕立てて関ヶ原の戦いに勝利します。
その後も担ぎ出された二郎三郎は「家康」である重責に押し潰されそうになりながらも、お梶の方(観月ありさ)たち側室の助けを得ながら庶民のためのユートピアをつくるために天下人を演じ続けます。そして豊臣家との宥和を図る「家康」は、豊臣家を滅ぼし権力を掌握しようとする家康の三男・秀忠(山本耕史)と対決を決意することになります。
このドラマは「関ヶ原の戦い」「大坂の陣」という誰でも知っている戦国時代のスペクタクルが楽しめることに加えて、二郎三郎と側室たちの男女の物語が描けているところが美点です。家康の影武者として大奥に乗り込んだ二郎三郎が人柄のよさで側室たちの支持を得て子宝にすら恵まれるところが見どころです。コミュ力高いです。
出演者ではやはり西田敏行の演技はすごい。ドラマの半分ぐらい西田芝居に支配されていると言ってもよい。秀忠との対立が深まり、影武者にもかかわらず上から目線で秀忠を恫喝するシーンはしびれます。
他の出演者では秀忠を演じた山本耕史も好演。新春に放送されたドラマ「坊っちゃん」ではうらなり役でしたが、ヘタレ役が板に付いてきたようです。先々楽しみな役者です。
ストーリーに話を戻すと、歴史が示すとおり「家康」が望んだ豊臣家との宥和は成立せず、豊臣家は滅亡し秀忠の治世になります。さてドラマのオチはどうつけるのだろうと見ていると、八代将軍吉宗からは本物の家康の血筋は絶えて将軍家は二郎三郎の血筋になるというオチでした。よく出来ています。
NHKの大河ドラマも歴史上無名の女性を主人公にするのではなく、本作のように「歴史のIFシナリオ」を採用して娯楽性を追求してもいいのはないでしょうか。そんなことを思いながら「影武者 徳川家康」楽しみました。オススメです。