近くのシネコンで映画『バクマン。』(2015年、監督:大根仁)を見てきました。原作・大場つぐみと作画・小畑健による同名コミック(全20巻)の実写化映画。原作漫画が好きなので実写版を見てガッカリしないかと不安だったので見に行くか悩んだのですが、思い切って行ってきました。予想以上によかったです。クール・ジャパンなど言われていますが、このまま海外にも通用しそうな映画でした。
- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2016/04/20
- メディア: DVD
二人の高校生、真城最高(佐藤健)と高木秋人(神木隆之介)がコンビと組んで「週刊少年ジャンプ」で頂点を目指すという青春映画。「うおぉ~」と二人で走り出すだけでテンションが上がります。
ただし全20巻の漫画を2時間ぐらいの映画にそのまま再現できるはずもなく、思い切って取捨選択されています。とくに恋愛要素は徹底的に排除されているのが特徴的です。
原作では、最高のクラスメイトの亜豆美保(小松菜奈)への恋心をモチベーションにして漫画に邁進する姿が描かれますが、実写版では亜豆を一歩引いた位置に置いて象徴的に描いています。その他の女性キャラクターも大幅に刈りこんだため、最高の叔父・川口たろう(宮藤官九郎)が亜豆の母を好きだったという設定もありません。全編を通じて恋愛要素は希薄です。
その一方で主人公二人の漫画への情熱を前面に出した構成になっていて、ストレートな青春映画として成立させています。一部の原作ファンには物足りないかもしれませんが、映画としてはアリ。取捨選択してテーマを絞り込んだことが奏効した少ない例でしょう。
漫画を描くシーンは絵的に地味になるかなと思っていましたが、プロジェクトマッピングを駆使した斬新な映像は意表をつかれました。いままで見たことのない映像で驚きました。教室の黒板にどんどん漫画のアイディアが書かれていくシーンも面白かった。
ただリアリティはかなり損なわれていて一種のファンタジーになっているのは意見の分かれるところかもしれません。高校生が簡単に週刊誌の連載を始めるのはともかく、アシスタントがいないで二人で頑張って過労で倒れるというのはどうなのかと。編集担当の服部哲(山田孝之)は何をやっていたのかと小一時間問い詰めたい。
その後、ライバルたちが一人ずつ集まってきて窮地に陥った二人を助けるというベタな展開もそれでいいのかと思いましたが、全体がファンタジーだと思えば気になりません。熱い青春映画として楽しむのがいいのでしょう。それでも主人公二人の漫画への情熱が観客に伝わってくるのは美点です。
原作漫画は「週刊少年ジャンプ」の連載のなかで、ジャンプ連載を目指すというメタフィクション構造になっていたのが印象的でしたが、本作でのジャンプ編集部の作りこみがすごい。どのくらい再現できているかは知るべくもありませんが、こんな感じなのかと納得できる上がりです。一見の価値あります。これもジャンプ愛の表れでしょうか。
圧巻はいわゆるジャンプ文化をリスペクトしたラストクレジットです。これは必見。映画をつくった人たちが漫画好きなのが伝わってきます。席を立たないで最後まで観てみてください。