沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が2015年5月20日、日本外国特派員協会で会見して、辺野古に米軍の基地をつくらせないことへの決意を改めて表明した。まら知事は27日から訪米の予定だが、このなかでも辺野古移転に対し「絶対につくらせない」という意思を米国側に伝えたいと語った。
会見は1時間程で同時通訳付きなのでストレスなく見られる。知事の基地問題に対する姿勢がよくわかる。批判的にツッコミを入れながら見てみるも勉強になるだろう。
日本外国特派員協会の会見は、質問する人が事前に決まっておらず自由に行われているし、海外メディアから視点による質問も面白い。
「私たちにも生きる権利と尊厳がある」翁長沖縄県知事が外国特派員協会で沖縄独立論に言及 ...
銃剣とブルドーザー
米軍施政下に土地を「銃剣とブルドーザー」で奪われた。沖縄が自ら基地を提供したことは一度もない。それなのに普天間基地が危険になったら代替地をよこせというのは理不尽だと知事はいう。もっともだ。
沖縄の戦後については同情を禁じ得ないが、日本が戦争で負けて米軍の占領下の出来事だからどうしようもない。私の身近でも少し前まで立川に広大な米軍基地があったし、所沢にはまだ米軍の通信施設が残っている。
日本がサンフランシスコ講和条約で独立を回復したあとも全国に多くの米軍の施設が残っているのは、日米安保の基本的な枠組みのせいだ。もっと言えば、日本は真の独立を達成できていないとも言える。
それでも沖縄に多くの米軍基地が集中している事実はある。しかし別に沖縄を差別しているわけではなく地政学的な理由によるものだろう。国境の街に軍事拠点があるのは当然だ。本土復帰が遅れたいう歴史的な経緯もあるだろう。
日本政府に当事者能力なし
知事は基地問題については「日本政府に当事者能力がない」と喝破している。これはまったく正しい。上にも書いたように日本は真の独立を達成していないとすれば、日米が対等なパートナーであるはずがない。
したがって日本政府を飛び越えて、直接米国に沖縄の基地問題を訴求するのは納得できる。もっともカウンターパートでもない沖縄県知事がどこまで相手にしてもらえるのが分からないが。先の日米首脳会談でも辺野古移転は決定事項と確認されていることも付言したい。
「沖縄独立論」に言及
会見では記者からの質問の応じて、「沖縄独立論」について次のように言及している。
「独立」は簡単ではないが、「ない」となると、「沖縄はほっとけ」「もっと基地を置いとけ」ということになると、それは分からない、と。
さらに、沖縄が独立するよりは、日本が沖縄を切り離す心配がある、とも述べている。実際、ネットでも「沖縄は独立しちゃえよ」というコメントが目立った。このまま沖縄と中央政府の対立が深まればそうした動きが出てもおかしくない。みんな沖縄にうんざりしている。
沖縄の本土復帰がまちがいだった
歴史的経緯をみると、沖縄の本土復帰が間違っていたように思われる。一応、沖縄の行政のしくみは形式上は本土の都道府県と同じ扱いになっているが、そもそも米軍は軍政を日本に返還してつもりはないのではないか。
返還の経緯について、「密約」なるものが見つかり日米の間で裏契約があったことが明らかになった。沖縄については民政上のコストは日本が負担するが、実際は軍政は米軍施政下のままだということなのだろう。
このわかりにくい構造は沖縄の人たちに間違ったメッセージを送ることになった。本土と比べてどうのこうのとか、本土は沖縄に米軍基地を押し付けやがっていう不満が出るのは当然だ。しかし、実態は上記のとおりなのだから、いっそのこと沖縄を「日米共同統治領」とか「99年間米国の租借地」という形にするのがよかっただろう。
そうすれば、日本政府は住民の人権を考慮する必要もないし、補助金や交付金などのコストも低減できたはずだ。沖縄の人たちも表立って日本政府に文句は言えないだろう。一方、アメリカからみればいまの体制は最高で、民政上のコストはゼロなりその上思いやり予算をもらってホクホクということになる。さぞ居心地がいいだろう。佐藤栄作はノーベル平和賞をもらったが、まったく日本は実利を得ていなかった。
今度どうすればいいのか
沖縄の米軍基地は安全保障の上で不可欠なのは間違いない。だとすれば現在の知事の基地問題に対する姿勢は日本の安全保障上のリスクとも言える。
今回の会見を見ると、沖縄との妥協点を見つけるのは容易ではないようだ。そうなると政治的に封じ込めるしかない。翁長知事を次回の選挙で葬り去り、傀儡とまでは言わないとが中央政府と協調できる人が知事になってもらうのがいいだろう。
それためには中央政府は行政裁量で可能な範囲で補助金や交付金をカットすればいい。2年ぐらいで日干しになり、多少考えもかわるだろう。
また沖縄は基地を押し付けてられているというが、一方で膨大な交付金や補助金が中央政府から沖縄に投入されている事実も見過ごせない。年間3600億円、累計では10兆円を越えるともいう。これらの実態を精査して、政府広報として新聞各紙に載せることから始めるのがよいだろう。
今日はこのくらいにしておきましょう。ごきげんよう。