退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『横道世之介』(2013) / 青春映画の秀作。吉高由里子がいいね

目黒シネマで『横道世之介』(2013年、沖田修一監督)を鑑賞。吉田修一の同名小説の映画化。主演は高良健吾、ヒロインは吉高由里子。当日は沖田監督作品の二本立てで、『滝を見に行く』が併映作品だった。

横道世之介 [Blu-ray]

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実にゆったりとした映画。上映時間が160分になる作品だが長くは感じなかった。そうは言っても、刺激的なイベントが次々の起こるわけでもなく、淡々と日常が描かれる映画なのに退屈に思う人もいるかもしれない。

主な舞台は80年代後半の東京。法政大学に進学するため長崎から上京した横道世之介高良健吾)が新宿駅東口に降り立つところから始まる。駅前の斉藤由貴の大きなポスターなど80年代を再現した新宿の街並みはおっさんホイホイ。武道館での入学式、一人暮らしの部屋、キャンパスの様子なども往時の雰囲気がよく出ている。

しかし凡庸な地方出身者が進学のために上京して東京での生活を始めるという話だが、あれだけイケメンでコミュ力あれば、そりゃあ「リア充」になるだろうよ、というという僻みも聞こえてきそう……。サークル活動、アルバイト、ダブルデートなどリア充全開です。爆発しろ!

さて映画ではリア充な大学生・横道世之介の青春が日々が淡々と続くが、その後、横道は不慮の事故で死亡する。映画は横道の青春時代を中心に進み、折々で彼の死後に関係者が彼を懐かしむシーンが挿入される。伝統的な映画の文法に則った手堅い構成である。

ハンバーガーのシーンが繰り返されたり、死後に発見されるヒロインの写真など、いろいろなアイデアが盛り込んできているが、映画自体がゆったりと進行しているので嫌味に感じなられないのは美点であろう。

キャストでは成金の令嬢で横道と付き合うヒロインの吉高由里子が出色。お嬢様言葉が面白い。地なのかもしれないが、吉高は天然系の役が実にうまい。その後、朝ドラ『花子とアン』でヒロインを演じ、紅白歌合戦の司会をするなどブレイクしたのも納得できる。

映画には概ね満足したが、ひとつ気になることがあった。映画の終盤、横道がホームから落下した人を助けようとして亡くなるという件である。ここまで彼の青春物語をずっと見てきてた限りでは、横道はそうした行動をとらないだろう。なにか違う気がする。もっと普通の死因でもよかったのではないか。


『横道世之介』予告編 - YouTube

それでも青春物語として日本映画の歴史に残る作品。ぜひ、ゆったりした気分でじっくり見てほしい映画です。できれば劇場で没入してほしい。オススメです。
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