退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『モンスターズ・ユニバーシティ』(2013) / モンスターの人生も甘くない

DVDで映画『モンスターズ・ユニバーシティ』(2013年、ダン・スキャンロン監督)を鑑賞。ピクサー作品なので期待大。この映画は『モンスターズ・インク』(2001年)の前日譚であり、マイクとサリーが出会った大学時代が描かれる。

マイクは学校の授業でモンスターズ・インクを見学した時、「怖がらせ屋」に魅せられる。自分も怖がらせ屋になることを決意し、モンスターズ・ユニバーシティに入学することになる。

マイク(1つ目で緑のボールのような小さい体)は外観が怖くないという身体上のハンディキャップを克服するために奮闘する努力家。一方のサリー(でかいやつ)はエリート一家の出身だが自分の才能にかまけている。この二人組のバディ映画としても面白い。

この映画は子ども向けでハッピーエンドで終わるかと思いきや、「努力すれば報われる」ということが幻想であるという厳しい現実を観客に突きつける。「◯◯になりたい」という思いだけは実現できない夢もあるということだ。それが叶わなかったときにどうするか。そこで『モンスターズ・インク』につながる。二本併せて見たい映画である。

CGアニメの映像表現は圧倒的。10年以上前の『モンスターズ・インク』と比べてみると技術の進歩が実感できるだろう。とくに衣服の質感がすごい。アニメ技術も来るところまで来たというところだ。現在、NHKで放送中の『山賊の娘ローニャ』もCGアニメだそうだが、やはり雲泥の差がある。まあ比べるのはフェアではないだろうが。


Monsters University Final Trailer - YouTube

やや余談だがこの映画では、アメリカの大学の伝統的なフラタニティ文化がよく描けれているので日本の大学との違いを考えるてみるのも面白い。 TOEFLに備えて単語を覚えるとき、fraternity や sororityという語に触れた人も多いのではないか。しかし二人があっさり退学するので卒業までは描かれない。もっとアメリカの大学の伝統的行事を見せてほしかった。

そしてマイクが入学するときに大きな荷物を持って大学にやってくる場面にも注目したい。寮生活が基本のアメリカの大学らしいシーンだ。日本の大学はなぜ自宅生が多いのだろう。親元を離れてもアパート暮らしだ。上位校だけでも学生が安く生活できる寮を充実すれば教育格差もいくらか緩和されるし、コミュ力も身につくかも。そんなことも考えさせられた。

またマイクが簡単に大学入学を決めたのはやや不満。日本のような入試制度はないにしても、入学までのプロセスをもっと丁寧に紹介してほしかった。それともモンスターズ・ユニバーシティはFランクで全入なのか……。