2014年8月に死去した映画監督・曽根中生の自伝。昨年末にシネマヴェーラ渋谷で開催された追悼企画で監督作品を何本か見ていたので、本書を手に取ってみた。500ページ近くの大部の書。
- 作者:曽根中生
- 出版社/メーカー: 文遊社
- 発売日: 2014/08/26
- メディア: 単行本
曽根が映画の仕事をしていた時期が中心だが、生い立ちや学生時代の出来事、そして映画を離れてからの人生についても書かれている。東北大学文学部の野球大会での奮戦ぶりや、映画界きっての碁打ちだったという話が印象に残る。
また日本の映画産業が衰退していくなか、日活がロマンポルノに路線転換する時期が興味深い。多くの人の人生が変わってしまったことがうかがえる。それと同時に日活の経営が順調でそのままフツーの映画を作っていたら、曽根監督の出番が来たのだろうか、またどんな映画を撮ったのだろうか、といったことも考えてしまう。
この本で紙面を大きく割いているのは「監督全作品インタビュー」であり、いちばんの読みどころだ。監督の生きた言葉が伝わってくる。既に見た作品を中心にインタビューを読んでみたが、舞台裏や演出意図などいろいろ気付きがあって面白い。こうしたインタビューが残されたのはまさに僥倖であろう。
ただし未見の作品のインタビューを先に読んでしまうと、楽しみがスポイルされるかもしれない。先に映画を見るのがよい。とは言うもの、ついつい見ていない作品の情報が入ってきてしまう。
本を読んでいて見てみたい作品がいくつも出てきたが、なかなかすぐには見られないのがB級映画のつらいところ。ソフト化されていない作品もある。いつの日か再び名画座で特集が組まれるのを待つことにしよう。