退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『祇園の暗殺者』(1962)

新文芸坐の《春日太一新文芸坐 セレクション オススメ時代劇映画祭》という企画で、近衛十四郎主演の映画『祇園の暗殺者』(1962年、 監督:内出好吉)というレアな作品を鑑賞する。併映は『子連れ狼 三途の川の乳母車』(1972年)。

舞台は幕末の京都。薩摩出身の勤皇の志士・志戸原謙作(近衛十四郎)は土佐浪士・武市瑞山佐藤慶)らと手を結び、佐幕派の暗殺を繰り返す日々だ。ある日、目明しの家を襲い妻子まで斬り殺すが、戸の隙間から覗く幼女の視線が気になっていた。

数年後、その幼女が美しく成長したお鶴(北沢典子)と偶然再会するが、親を殺したことを責められて人殺し稼業に愛想が尽きる。一方、志戸原は一派のなかで瑞山の勢力が伸長していることを思い知らされ、自分が邪魔者にされていることに気づく。

その後、一派は江戸に向かう御用商人を宿を襲うが、志戸原は物陰に隠れていた標的だった商人を見逃してしまう。それを同士から咎められ追われる身になる。祇園祭の京都を逃げまどうが、とうとう追い詰められる。志士のひとり(菅貫太郎)の拳銃が火を噴き志戸原は倒される。彼の耳には次第に祇園囃子が遠のく……。

まあこんな話だ。終盤の京都の街を逃げまどう場面は、洋画を彷彿させるカットがあり、「おっ」と思わせるものはあるが、全般的には演出は紋切り型の東映時代劇の域をでない。笠原和夫の脚本がすばらしいだけに残念だ。

あえて見どころを探せば、俳優座から京都撮影所に派遣されていた佐藤慶菅貫太郎と、近衛十四郎をはじめとする東映の役者たちとの掛け合いだろうか。芝居の対比が面白い。

また、この映画の近衛十四郎松方弘樹に本当に似ているので驚かされる。外見が似ているのは親子だからというころもあるだろうが、所作や殺陣までがそっくりだ。最近の映画『十三人の刺客』(2010年)の松方弘樹と比べてみるといいかもしれない。

余談になるが、私のなかでは近衛十四郎と言えば、テレビ時代劇『素浪人 月影兵庫』『素浪人 花山大吉』の印象が強い。品川隆二との弥次喜多道中が楽しかった。Huluなどでネット配信してくれないものか。意外に現代にも響くものがあると思うのだが。

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