読売新聞が、「TPP交渉において著作権の保護期間を70年に統一することで合意する見通しになった」と報じていた。え、いつの間にそうなったのだろう。しかも交渉過程は機密保持で表に出ないはずなのに……。さすが読売新聞だ。
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加している日米など12か国が、音楽や小説の著作権の保護期間を70年に統一することで合意する見通しになった。
新薬を開発した企業が市場を独占できる「データ保護期間」は、先進国は10年程度、新興国は5年以下と、新興国側に配慮した案で決着する見込みだ。難航分野の一つである知的財産権分野の交渉にめどがつき、TPP交渉全体が妥結へ向けてさらに前進する。
(以下略)読売新聞(2014年5月13日付)より
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20140512-OYT1T50171.html
著作権保護期間は延長すべきか、という議論は長く続いているが結論が出ないままに日本では著作権保護期間は50年のままになっている。議論すべき点は多岐にわたるだろうが、2006年のシンポジウム「著作権保護期間は延長すべきか 賛否めぐり議論白熱 (1/3) - ITmedia NEWS」では4つの論点を挙げているので参考になるだろう。
様々な立場の人がいるので容易に結論の出る問題ではないだろうが、本来ならそれぞれの論点について十分な国内議論を経てからTPP交渉に臨むべきなのだろう。にもかかわらず、いつの間にか外圧によって重要な決定がなされるという悪弊を繰り返しそうだ。いったん延長したら短縮するのは事実上不可能だろうから、もう少し慎重に進めてほしい。
TPP交渉の農産物保護のニュースを見て、「おい、早く安い肉食わせろや」程度に思っていたら、いつの間にか重要な事がが決まっていた。秘密保持の名のもとに国民は蚊帳の外ということらしい。
著作権期間延長と言えば、著作権切れの作品をアーカイブしている「青空文庫」を思い出す。最近では吉川英治や室生犀星の作品が公開されたことは記憶に新しい。「2014年〜2016年に著作権が消滅する作家まとめ - ITmedia eBook USER」によれば、佐藤春夫、谷崎潤一郎、江戸川乱歩らの大物作家の作品がそろそろ著作権切れを迎える見込みだ。しかし今回の著作権保護期間を死後70年にしようとする外圧により、そのまま著作権消滅を迎えるかわからなくなったぞ。ヤレヤレ。
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