退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『斬る』(1968)

先週、シネマヴェーラ渋谷の「岸田森特集」で映画『斬る』(1968年、岡本喜八監督)を観た。白黒の時代劇映画。

侍を捨てた弥源太(仲代達矢)と侍になりたい百姓・半次郎(高橋悦史)が、家老(神山繁)の圧政に憤る青年藩士に出会い、お家騒動に巻き込まれる。岸田森は、青年武士を討つために家老に雇われた浪人たちの頭を演じている。

後年、不気味な役が多かった岸田だが、本作では剣道の経験を活かした殺陣を披露しているだけでなく、影がありクールだが実は正義感にあふれたキャラクターを演じていてかっこいい。このような娯楽時代劇を撮ると岡本喜八監督は実にうまい。

併映は『かわいい悪魔』という1982年に放送されたテレビ作品だった。大林宣彦監督のホラー。CMのタイミングで「火曜サスペンス劇場」のロゴが音楽とともに流れていたがカットしてほしいところ。岸田森は別荘の番人を演じているが出番が少なく、秋吉久美子の一人舞台という趣きだった。どうせ岸田森にちなんだテレビ番組を上映するなら、「怪奇大作戦」や「サンバルカン」が見たかった。

余談だが岸田森といえば、『不死蝶 岸田森』という本が忘れられない。この題名は岸田が蝶の標本の収集に熱中していたことに由来する。ほかにも彼の意外な一面を伺うことができ興味深い本だった。昔、この本を持って飛行機で太平洋を横断したことがある。他に手元に読むものなく、寝付けなかったので何度も読んだ。その本はいまだに処分の逃れて書棚に残っている。