退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『一命』(2011) / 竹光で切腹するのは痛そうだ…

DVDで映画『一命』(2011年、監督:三池崇史)を鑑賞する。原作は滝口康彦の小説『異聞浪人記』であり、映画『切腹』(1962年、監督:小林正樹)のリメークでもある。リメークではなく同じ小説を基にしただけかもしれないが、どうしても比較される2つの映画だ。

切腹』のナラタージュを使った脚本はよくできていて、最初に見たとき「さすが橋本忍だな」と思ったものだが、『一命』でも同じ流れて進行する。これは原作どおりのなのかもしれないが未確認。

さて、ここで主要キャストを並べてみよう。

役名 切腹(1962年) 一命(2011年)
津雲半四郎 仲代達矢 市川海老蔵
千々岩求女 石濱朗 瑛太
美保/美穂 岩下志麻 満島ひかり
沢潟彦九郎 丹波哲郎 青木崇高
斎藤勘解由 三國連太郎 役所広司

市川海老蔵の半四郎は、歌舞伎調のセリフ回しも今回は役柄に合っていて悪くない。しかい、いかんせん孫がいる老浪人を演じるには若すぎる。戦乱を生き抜いてきた迫力が感じられないのは惜しい。他も『切腹』の配役は凄すぎるので比べるのは酷かもしれない。

今回、『切腹』の名シーンだった、津雲半四郎(仲代達矢)と沢潟彦九郎(丹波哲郎)の決闘が、『一命』では簡単に済まされている。しかも3人まとめて髷を取られるというお手軽な演出になっていて残念だった。さらに最後の大立ち回りで、井伊藩の侍たちを相手になぜ半四郎は竹光で戦うのか。解釈はいろいろありそうだが、正直意味がわからない。

演出のちがいと言えば、『切腹』は武家社会の不条理を痛切に批判した内容だったのに対し、『一命』では家族愛を描くのに重点が置かれている印象を受けた。どちらがよいというものでもないが、これも世相なのかもしれない。私は『切腹』の方が断然好きだ。

『一命』が優っていると思われる点は、求女が竹光で切腹するシーンだ。『切腹』より痛そうで残酷の度合いが増していて見ているがツライほどだ。全体的には『切腹』の圧勝といったところか。上記の2本を見比べるのも一興だろう。

一命 - YouTube

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