新文芸坐で映画『凶悪』(2013年、白石和彌監督)を観た。「画になる悪、洋・邦の悪い奴対決!!」という企画上映で併映はリドリー・スコットの『悪の法則』だった。
獄中の死刑囚が告発した殺人事件の真相を雑誌社の記者が暴き、首謀者の逮捕に至るまでを描いた社会派サスペンス映画。
話は面白いし主要キャストも申し分ないのだが、なぜか心に響くものがない。映画全体がとっちらかっている印象を受ける。リメイクされたらもう一度見てみたいと早くも思うほどだ。
ピエール瀧とリリー・フランキーの凶行ぶりは、園子温監督の『冷たい熱帯魚』を彷彿させるが、どうもその手の映画を作りたかったのかと思えるフシがある。犯罪者の出すオーラを捉えたかったのではないか。
その一方で、雑誌記者(山田孝之)が事件の真相を解明していくという構造になっているため、記者の家族の事情を中途半端に挿入して、全体としてはとっ散らかってしまった。雑誌記者は狂言回しでよかったのではないか。