退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

『ぐるりのこと。』(2008)

早稲田松竹で「ぐるりのこと。」(2008年, 橋口亮輔)を鑑賞。愚直な映画。「生きにくい」と思っている人に見てほしい映画。

ぐるりのこと。 [DVD]

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美大出身の夫婦の話。この夫婦は、やがて子どもを授かるが不幸にして幼くして亡ってしまう。これを契機に、妻・木村多江は精神的に病んでいく。いよいよ追いつめられるが、夫・リリー・フランキーの献身的なサポートにより再生する。

とにかく木村多江がいい。本作で日本アカデミー賞主演女優賞など多数の賞を受けたとのこと。いつかはブレークするだろうと思っていたが、ようやく認められたか。途中、不幸女優のカルマ全開で、ついに破滅するのかと見ていたが、創作活動を通して見事に再生する。解放されていくなかでの彼女の笑顔が印象的だ。

リリーは、飄々としながらも理想の夫を好演している。これが素なのか演技なのか、よくわからないが、独特のオーラが感じられる。その他の出演者も、私的には大変豪華ですばらしい。片岡礼子様も被告のひとりとして出演。

本作は、舞台を1993年から2001年に設定しているのが特徴的だ。法廷画家という特殊な職業をとおして、実際にその時期に起きた数々の事件を模した事件の法廷で、世の中の不条理と遭遇する。随分と技巧的な背景設定であるが、個々の事件が本筋に絡んでくることはない。演出意図がよくわからないが、法廷での被告人の挙動をとおして、9.11へと向かう冷めた世相を描くという、ある種の社会批判か。

今回の上映は「ハッシュ!」との併映だったが、どちらの作品も希望に向かっていくところで終わる。監督の持ち味だろうか。

余談だが、木村多江の取り乱した演技を見て、どこかで見たことあるなと思って、ずっと引っかかっていた。その後、数日経って思い出した。テレビドラマ「白い巨塔」(2003年)で、製薬会社のMRが末期ガンの患者になる役を演じたのが記憶に残っていたのだ。あの頃から、ずっと不幸女優だったみたい。