部屋にはベストセラー『「超」整理法』など野口先生の著書が何冊か書棚にあるし、「超」整理手帳を使っていた時期もあったりする。著者のファンとして読んでみた。読者のITスキルのレベルによって評価が分かれるかもしれないが、後半だけでも十分に読む価値があると思われる。
- 作者: 野口悠紀雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/09/18
- メディア: 単行本
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第3章までには、Gmailの活用法が中心となっている。Gmailの「分類をしない」という発想が、かつて『「超」整理法』で提唱された「押し出しファイル」に似ているのはおもしろい。「分類するな。検索しろ」というところか。ただGmailを既に活用している人には既知の内容が多いかもしれない。
Gmailについて、筆者は、メールのスレッドの扱いに問題ありとしているが、まったくの同感である。実際、探していたしていたメールがなかなか見つからずに困ったことがある。せめて、メール単位で管理するモードとスレッド単位で管理するモードを切り替えて使えるようにしてほしい。
第4章以降は、インターネット時代の知的生産技術や組織論に言及している。筆者が大学教授だからこそ適用可能ではないかと思えるところもある。ただ、これまで考えられないほど強力は知的生産の環境を、個人レベルで構築できるようになったのは事実であろう。生産性を高めるために必要となるスキルが変化しつつあるという指摘は重要だ。これからは、地頭が重要ということかもしれない。
あと本編に挿入されているコラム"Tea Break"のなかの、「眠れる森の美女」など知的なエッセイが、あいかわらず面白い。一読の価値がある。
余談だが、この本で、複数のコンピュータでファイルを同期するサービス「シュガーシンク」を紹介していた。このサービスは知らなかったので調べてみた。米Sharpcast社が提供するサービスで、SugarSyncというサイトで詳細が得られる。無料試用期間はあるが、サービスはすべて有償となる。10GBで年間24.99ドル、100GBで年間149.99ドルなどのメニューがあり、iPhoneにも対応しているようだ。
この企業は、米国カリフォルニア州に拠点をもつが、こうした新しいサービスがいつも米国から発信されるのは、なぜなのかということも考えさせられる。