退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

新谷かおるのコミック「エリア88」を読了!

ふと某所で見つけた、新谷かおるのコミック「エリア88」(全23巻)を読み初めて数か月。ようやく読み終わりました。この漫画は、漫画雑誌「少年ビッグコミック」で1979年から1986年にかけて連載された傭兵戦記漫画である。

(あらすじ)主人公の風間真は、親友に騙されて締結した傭兵契約を破棄するための違約金を稼ぐため、中東のアスラン王国で外人部隊エリア88の戦闘機パイロットとして戦うはめに陥る。エリア88には人種や国籍に関係なく、戦うことを職業とした凄腕パイロットが集結しており、ミッションごとに定められた報酬を目当てに日々命をかけた戦闘に日々挑んでいる。風間は人殺しへの嫌悪感と罪悪感を抱いきつつも、生への渇望、そして生きて日本に帰り恋人と再会するため、毎日の作戦に参加していくが……。

エリア88 2 (マンガの金字塔)

戦記漫画ながら、人物描写は少女漫画のようなテイストもありユニークな作風となっている。そして往時の戦闘機などメカの描写がしっかりしているのも美点だろう。砂漠を移動する「陸上空母」という荒唐無稽な兵器が登場するのも気分が上がってよい。

ストーリーは「巌窟王」のような古くからある復讐譚であり、目新しいさはない。それでも傭兵部隊の雰囲気が、登場人物の多彩さとともに魅力的に描かれているのは素晴らしい。ラストでは主人公の周囲の傭兵が次々に戦死するという全滅モノなのは安易だが、クライマックスへの高揚感をつくりだすのに一役かっている。

結局、主人公の風間は仇敵ともいう元親友を一騎討ちで倒すも、重症を負い傭兵時代の記憶を失って恋人のもとに戻るという結末である。まあ安直な終わり方だが、これ以外ないのかなぁとも思う。

私がとくに面白いとエピソードは、王族の家族の脱出を図る陸路での逃避行である。本来主人公はパイロットであり、戦闘機による空戦がメインだが、この逃避行では地上戦が繰り広げられて新鮮だった。

いまあらためて読み直すと、小さなアラもあるが、それにも増して魅力のある漫画であることはまちがいない。一読の価値あり。潤沢な予算で実写化されないかなと思った時期もあるが叶わぬ夢だろうか。

ちなみに本作は2回アニメ化されているが、正直言うと「コレジャナイ」と思った記憶がある。いま見たら違った感想を持つだろうか。

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