DVDで映画『森崎書店の日々』(2010年、監督・脚本:日向朝子)を鑑賞。原作は八木沢里志の同名小説、主演は菊池亜希子。
同僚でもある恋人(松尾敏伸)に手ひどく振られ失恋した貴子(菊池亜希子)は、職場に居づらくなり会社を辞めることになる。失意のなかの貴子に叔父・サトル(内藤剛志)から電話がかかってくる。神保町で小さな古書店を営むサトルは、店に住み込んで仕事を手伝ってほしいという。貴子はそれを受け入れ、古書店で働きながら、次第に立ち直っていく再生のヒューマンドラマ。
撮影や美術がプロの仕事をしていて落ち着いた雰囲気のいい映画で安心して見られる。
ただしストーリーは、原作小説があるとは言えちょっとどうかなと思う点は多い。まず職場恋愛の女性をあのようにひどく切り捨てる男性はそうはいないだろう。職場で働きにくくなるだろうし、ひいては出世にも影響が出る可能性がある。女性関係を整理するにしても穏便に済ます工夫はすると思う。このあたり女性視線の映画という気がする。
また後半サトル叔父さんが、貴子といっしょに元カレの家に殴り込みに行くシーンがあるが、それもどうかと思う。結局、警察を呼ばれそうになって退散するのだが、そんなことするヤツいるのかね。このシーンを見て思ったのは、叔父さんの人物描写が不十分だということ。どんな人なのかさっぱりわからん。
この映画のエンドロールに千代田区の名前があったので、神保町PRの側面もあったのだろう。古書店街や入札会、買い取りの様子が出てくるが、もうすこし古書店の仕事を深掘りしてほしかった。ライトノベル『ビブリア古書堂の事件手帖』のほうが詳しかった。
まあ学生が課題で制作したような、毒にも薬にもならないような映画だが、最後まで破綻せずに落ち着いて見られる作品で後味は悪くない。