DVDで映画『ガラスの脳』(1999年、監督:中田秀夫)を鑑賞。手塚治虫による短編漫画の実写化作品。主演は小原裕貴と後藤理沙。
飛行機事故の唯一の生存者だった妊婦が女の子を出産する。その赤子は目を覚まさず、成長だけを続けていく。数年後、喘息で入院していた少年・雄一は、少女・由美を「眠り姫」だと思い込みキスを繰り返して目覚めさそうとする。やがて雄一(小原裕貴)は高校生となり、テレビの「未だに眠り続ける少女」のニュースを見てかつての記憶が蘇る。ある嵐の夜、由美(後藤理沙)はついに目を覚ますが……。
もともと中途半端な話である漫画短編を1本の映画にまとめるのに無理がある。それでも翻案して青春映画と割り切って撮ったのは中田秀夫の手柄であろう。少女が覚醒したあと二人で遊園地でデートするシーンがとくによい。俯瞰撮影はベタではあるが演出が冴えている。シモンズの「ひとつぶの涙」の挿入歌もいい。
疑問なのは小原裕貴と後藤理沙のキャスティング。どちらも演技がたどたどしくて見ていられない。とくに後藤は時折いい表情を見せるが、「眠り姫」のイメージとはちがうように思った。DVDの特典映像に収録されていた監督のインタビューでは、ホテルのロビーで初対面したときに、演技のチェックないで直感的に決めたと話していた。そんなのでいいのかなぁ。別の女優が演じていたらまたちがった作品になっただろう。
ラスト由美の死後、解剖したら脳がガラスのようだったということで、タイトル回収されるわけだが、映画では肝心の脳は映像には登場しない。ここは美術の腕の見せどころだと思ったが、その点は残念だった。