前より気になっていた映画『総理の夫』(2021年、監督:河合勇人)を鑑賞。原作は浜田ハマの小説「総理の夫 First Gentleman」、主演は田中圭と中谷美紀。
世間知らずの大財閥の御曹司・相馬日和(田中圭)は、ある朝、少数野党の党首として活躍する年上の妻・凛子(中谷美紀)から総理大臣になることを告げられる。この言葉通り、凜子は日本初の女性総理に就任する。このことにより、日和は日本初のFirst Gentlemanとなるのだった。状況に困惑する日和は、内閣広報官の富士宮あやか(貫地谷しほり)により、日常生活を徹底的に管理されるようになるが……。
この映画最大の見どころは、中谷美紀が主演していることだろう。完全に男目線で恐縮だが、日本初の女性総理がこいう女性ならいいなと思わせるキャスティングは成功している。美しい。
一方タイトルロールとも言える、夫・日和を演じている田中圭はいつもと同じ演技で新鮮味は感じられない。ずっと追いかけてるわけではないが、見ていたテレビドラマでの薬剤師や指揮者の役と同じで代わり映えしない。演技の幅がせまいのだろうか。これが女性ウケする演技なのかもしれないが、男である我が身にはよくわからないが、それはそれでいいのだろう。
それぞれの出演者は健闘しているのものの、映画としてはまったくつまらない。コメディにしては笑えないのが致命的。コメディは難しいねと思ったものだ。また政治ドラマにしては淡白すぎる。とくに陰謀渦巻く政界を岸部一徳の演技だけで描いていいのかという疑問は大きい。連続ドラマでなくても、もう少し重層的な演出はできないものだろうか。結局、どう見ていいのかよくわらない映画になっている。
極めつけはラストである。結局、妊娠して首相を辞任するという救いようのない顛末に唖然とするばかり。まあ、現在の日本における女性の働きにくさを皮肉まじりで表現したと言えなくもないだろうが、「なんだかなぁ~」というのが率直な感想である。