ネット上で小銭を稼いでいたファスト映画が一斉に摘発された。そのニュースを聞いて、「まあ違法だわな」と思ったが、それと同時にファスト映画にニーズがあることに訝しく思っていた。
この本には、映画を早送りして見るという不思議な習性を持った人たちの生態をわかりやすく説明している。なるほど、そういうことだったのかと思うと同時に「いまの若者は余裕なさすぎでかわいそう」というのが第一感である。
筆者は実際に大学生に取材したというこで、論がまったく的外れというわけでもないだろうが、本当にこれがマジョリティなのなかという疑問は残った。もう少し大規模なリサーチが必要ではないか。それでも「鑑賞」と「消費」という考え方は頷ける。とくに昨今の日本映画はセリフで説明しすぎだと常々思っていたので納得できる部分は大きい。
いままでなるべく名画座で映画を鑑賞していきた“おっさん”は、趣味まで「コスパ(タイパ)」を考えなくてもいいだろうと思ってしまったが、まあそうした考えはもやは古いのかもしれない。この調子でいくと、都内にかろうじて残っている名画座の命運が尽きるのは時間の問題だし、映画批評というジャンルの存続も危ぶまれる。
これも動画サービスサイトやSNSの普及による副作用だろうが、技術の進歩が必ずしも明るい未来をもたらすわけではないという当たり前のことをあらためて思い知らされた。