退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020) / 野党議員・小川淳也の17年間を追ったドキュメンタリー映画

DVDで映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020年、監督:大島新)を鑑賞。立憲民主党衆議院議員小川淳也の17年間を追ったドキュメンタリー映画である。ポレポレ東中野で上映されていたのは知っていたが、コロナ禍だったこともあり見たいと思いながらも見れていなかった作品。

総務省のキャリア官僚だった小川淳也が、次期衆院選に香川1区から民主党公認で立候補することを決意するところから映画は始まる。政治家・小川淳也を長年にわたり追う。

初めての選挙では落選するものの、いまでは当選回数6回を数える中堅議員。それでも党内で出世しないと愚痴をこぼす姿が印象的。また小選挙で当選しないとダメで、比例区で復活当選しても党内では発言力がないという発言が何度も出てくる。同じ衆議院議員なのに、そんなに違うものなのかと興味深い。


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党内で出世しないので、いまだにドブ板選挙。党幹部ともなれば、そうした苦労とは無縁になるらしいが、それについて自分の不甲斐なさを嘆いている。もっとも当時の民主党で初当選するが、その後は政争に巻き込まれて、民進党希望の党、無所属、立憲民主党と落ち着きがないのだから仕方ない。

とくに小池百合子希望の党から出馬するとは政治センスのなさに呆れる。自分自身も「小池が〜」と呼び捨てにして不満を吐露していたが自業自得だろう。自転車に乗った有権者のおじさんに、節操の無さを痛烈に批判されていのも、これまたむべなるかな。

見どころはいろいろあるが、小川議員の家族の描写が面白い。家族たちは誰も政治家になったことをよかったと言わない。奥さんなんてエリート中央官僚と結婚したのに、なぜドブ板選挙を戦わなければいけないのか憤懣やるかたないだろう。二人の娘にも「政治家の妻にはならない」ときっぱり言われる始末。また父親が「だれかがやらなければいけないが、お前がやることはない」と語っていたのはリアリティが感じられた。

タイトルの『なぜ君は総理大臣になれないのか』はキャッチーだが、正直、主人公が総理大臣になる目は1ミリもないし、再び野党が政権を奪取して政権交代が起こる可能性も極めて低い。どうして野党がこうもポンコツなのかという疑問についても、この映画は少しは答えを提示しているように思える。

それでもこの映画は小川議員の人物をよく描くことには成功しているし、日本の政治の問題点も少なからず浮き彫りにしているように思う。全国で公開されて支持を集めた理由は理解できる。

DVDには特典映像として、小川議員を交えてスタッフの座談会が収録されていた。ドキュメンタリー映画を見るたびに儲からないだろうにどんな人が制作しているのか気になっていた。この疑問についても座談会は答えを示している。座談会で話題になっていたがカメラマンの腕前には感心した。プロはちがうなぁ。詳細はぜひDVDで確認してほしい。