Amazonプライム・ビデオで映画『決算!忠臣蔵』(2019年、脚本・監督:中村義洋)を鑑賞。これまで幾度となく映像化されてきた「忠臣蔵」だが、これまでとは一線を画し、「討ち入り予算」をテーマにした異色作。原作は、山本博文の新書『「忠臣蔵」の決算書』である。
浅野内匠頭(阿部サダヲ)は、幕府の重臣・吉良上野介に斬りかかり、即日切腹、藩はお取り潰し決まる。筆頭家老・大石内蔵助(堤真一)は、嘆く暇もなく、幼馴染の勘定方・矢頭長助(岡村隆史)の力を借り、ひたすら残務整理に励む日々。御家再興の道が閉ざされた彼らに残された途は、宿敵・吉良邸への討ち入りのみ……。
基本的にコメディ時代劇だが、プロジェクト管理の視点から見るとなかなか面白い。こうした大事を成すには、緻密な予算管理が必須のはず。大石内蔵助が実際に残した決算書を基にしているだけあり、リアリティが感じられる。きっと浪士のなかに実務家がいたのだろう。
新たな収入があるわけでもなく、手持ちの資金だけで支出を賄わなければいけないのがツラい。浪士たちの生活費や食費に家賃、江戸までの往復旅費、討ち入りするための武具などなど。おカネがどんどん出ていく。
劇中で松の廊下の刃傷沙汰や討ち入りなどをバッサリ省略しているのは潔い。忠臣蔵でこれはないだろうと思うが映画を見終わってみるとアリだなと感心した。終始、勘定の面から討ち入りを捉えていて、軸がブレていないのもよい。また全編セリフを関西弁で通しているのも独特の雰囲気をつくることに成功しているようだ。
見る前はまったく期待していなかったが、本作はなかなかの収穫だった。オススメします。