退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書、2020年)

スウェーデン精神科医によるベストセラー。「スマホ脳」というタイトルはインパクトがある。コピーライターはお手柄。

現代の生活では手放せなくなったスマホ。そのスマホにより引き起こされる、記憶力や集中力、学力の低下、依存などの弊害について、数々の実験結果から警鐘を鳴らす。この本を読むと、電車のなかで乗客がこぞってスマホを操作しているのを見るとちょっと怖くなる。

いちばん興味深いのは子どもや若者への影響である。スティーブ・ジョブズがわが子にiPadを与えなかったのはあまりにも有名だが、その理由がわかったような気がする。成長段階の子どもへは悪影響を無視できないのは想像に難くないが、これといって規制がかけられておらず、家庭の問題になっているのは実は由々しき事態かもしれない。

また電子書籍と紙の本の対比も興味深い。どうやら紙の本のほうがいろいろと優れているようだ。実体験とも合致するので納得の実験結果だが不思議なことだ。電子書籍で蔵書を揃えようとするのは悪手かもしれないとも思ったが、人間側の慣れの問題かもしれないなとも思った。どうなのだろうか。

そして、これも想定内であるが、スマホの弊害に対抗する手段で有力なのは「運動」だという。どんな運動でもよいらしいが、心拍数を上げる運動がより効果的だという。こうしたことが科学的に述べられているのは参考になる。

巻末に「デジタル時代のアドバイス」というセクションがあり、スマホの弊害に対抗する具体的な方法が列挙されている。いくつは取り入れてみようかと思っている。子どもだけでなく大人もスマホとの付き合い方を見直すよいきっかけになるだろう。

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