何度か公開延期になった劇場アニメ『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(2021年、監督:村瀬修功)がついに公開された。さっそく近くのシネコンで見てきた。シネコンの各種割引が適用されず特別料金で1900円(高い)。三部作の第1作。
ファーストガンダムなどと同じく「宇宙世紀」を舞台とする作品であり、ブライト・ノアの息子ハサウェイ・ノアを主人公とする物語。原作は、1989年から1990年に角川スニーカー文庫より刊行された富野由悠季の小説作品。宇宙世紀を舞台する最後の大物作品となる。
鑑賞後、気になったことをいくつか列挙しておく。
第一に、背景の說明が不十分。「シャアの逆襲」以後の政治状況や、ハサウェイが地球連邦組織「マフティー」の首魁となった経緯などを観客にていねいに提示するべきだろう。とくに地球連邦政府の高官ら特権階級の腐敗ぶりと、強引な「人狩り」政策は触れないわけにはいかないはずだ。毎週放送されるテレビアニメならば、あとで理屈を說明するのもいいが、これは劇場公開映画。一作で閉じていてほしい。
第二に、モビルスーツの戦闘シーンが夜戦でメカが見づらい。地上の人間の視点でモビルスーツの戦闘が迫力満点に描けているのは評価したいが、いかんせん肝心のモビルスーツがよく見えない。あとΞガンダムやペーネロペーが、他のモビルスーツとの差異をもっとフォーカスしてほしかった。メカを明るいところできちんと見たかった。
第三に、一本の映画として構成に不満。上でも触れたが、この作品は一本の映画としてみたときに満足できない。私は「三部作の一」だと知っていたが、それを知らずに見にきた人は「えっ、これで終わり?」と呆気にとられただろう。宣伝でもことさらに「三部作」だということを表にだしていないのも姑息に思える。ファーストガンダムの劇場版では、少なくとも映画としての文法に則って一本の映画を作るという意図が見えたが、この作品をそれすら放棄しているように思えた。
総じてアニメの質は高く、現時点のガンダムアニメの到達点と言っても差し支えない。いろいろ不満点はあったが、次回作も特別料金を払っても見るだろうと思えるぐらいいは満足した。これはサンライズの思う壺というところか。