DVDで映画『ファントム・オブ・パラダイス』(1974年、監督:ブライアン・デ・パルマ)を鑑賞。『オペラ座の怪人』『ファウスト』『ノートルダム・ド・パリ』などの古典を咀嚼してロックンロール・ミュージカル映画に仕立てた異色作。パルマ監督のインテリぶりが発揮されたカルト映画の古典。
気は弱いが天才的なミュージシャンであるウィンスロー・リーチ(ウィリアム・フィンレイ)は、腹黒いレコード会社の社長スワン(ウィリアム・フィンレイ)により、自分の曲を盗作された上に無実の罪まで着せられて収監される。刑務所を脱走した彼は、レコードのプレス工場に忍び込むが機械で顔半分を押しつぶされてしまう。仮面をかぶり怪人と化したウィンスローは、スワンの裏切りに激怒して復讐の鬼となるが……。
MTVの先駆けとなった鮮烈な映像美と痛烈なロックが妖しく絡まった傑作ムービー。鬼才パルマの才能が遺憾なく発揮されている。まさにカルト映画の古典。ひさしりぶりに見たが、「パルマ天才!」と喝采した。
この映画のいいところは劇中の音楽がちゃんとイケてるところ。日本でこうした映画をつくると、音楽がダメダメでがっかりすることが多いが、さすがにショービジネスの本場のアメリカはタレントが揃っている。あえて難点を言えば、ヒロインがもう少しかわいかったらよかった。日本人の好みではないかもしれない。
また個人的には、劇中にバンド「ジューシー・フルーツ」やオカマのロックシンガー「ビーフ」が登場して、にやりとする。近田春夫のバックバンドだった「BEEF」を前進とした、バンド「ジューシィ・フルーツ」が、「ジェニーはご機嫌ななめ」をスマッシュヒットさせたことを知る人も少なくなった。
ちなみに後年、この映画を下敷きにして映画『星くず兄弟の伝説』(1985年、監督:手塚眞)がつくられている。この映画のことを知る人はもっと少ないだろうか。この時期は日本のいちばんいい時期だったような気がする。