12日投開票の英国総選挙で、ジョンソン首相が率いる与党保守党が歴史的な大勝利を収めた。来月予定されているEU離脱について有権者からの負託を受けたことになる。まあ他人事ではあるが行ったことのある国や地域のことは気になるものである。
EU離脱を問う国民投票から3年半
英国でEU離脱の是非を問う国民投票が行われたのは、2016年6月である。結果は周知のとおり僅差で「離脱派の勝利」となった。このまますみやかにEU離脱するかと思われたが、グダグダと3年半も政治的混乱が続き、英国政治は身動きがとれない事態になっていた。
国家の一大事の是非を国民投票で問うことがいかに危ういことかを示すことになった。
他人事ながら「それなら総選挙で決着つければいいだろ」と思ったが、そう簡単ではないようだ。実際メイ首相は選挙に勝ちきれず、事態を打破することはできなかった。そもそも日本とはちがい首相の一存で議会の解散ができないという制限があることもよく知られるようになった。
一方、日本では制度上は首相の考えひとつで解散・総選挙できることになっていて、政治的に行き詰まったら「伝家の宝刀」を抜いて解決を図ることができるようになっている。
もっとも最近の日本では、不信任決議されたわけでもなく、たいした政治的課題がなくても、首相が勝手なタイミングで解散総選挙に持ち込むという禁じ手が多用されているように思える。日本の制度にも大きな問題があるように思うが、いざというときは日本のほうが「決められる政治」ができるのかもしれない。
EU離脱後も課題は山積
ジョンソン首相は一応EU離脱については有権者の指示を取り付けた。しかし課題も多い。これから一から各国との間で貿易協定を結び直さないといけないというのも当然だが、国内情勢も楽観できない。
もっとも気になるのは、アイルランドとの国境問題である。過去に様々な因縁のあるこの問題をどう解決するのだろうか。北アイルランドで独立の動きがあっても驚かない。
さらにスコットランドの独立問題も懸念される。今回の総選挙の結果でもスコットランドでは、下図のようにスコットランド民族党(SNP)が躍進している。
スコットランド独立を問う住民投票が行われ、独立が否決されたのは2014年9月のことである。結果は僅差だった。しかし英国のEU離脱が事実上決まったことにより状況は一変した。もう一度、スコットランドで住民投票が行われても不思議ではない。
「教養あるトランプ」などと呼ばれるジョンソン首相にとっては前途多難な状況は続く。