退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『洲崎パラダイス 赤信号』(1956) / 腐れ縁の男女をクールに描く川島雄三監督の傑作

新文芸坐の《日本映画 匠の技Vol.4 白黒映画の美学 日本映画黄金時代に到達した、光と影の極みを堪能する11日間》という企画で映画『洲崎パラダイス 赤信号』(1956年、川島雄三監督)を鑑賞する。原作は芝木好子の小説『洲崎パラダイス』。撮影は高村倉太郎。

舞台は売春防止法施行前の東京。勝鬨橋の上でワケありの女・蔦枝(新珠三千代)と男・義治(三橋達也)は「これからどうしようか」と思案する。ふたりはバスに乗り、洲崎パラダイスの入口で下車。女は求人の張り紙のある飲み屋で住み込みで働くようになる。女将(轟夕起子)は子ども2人を抱え行方不明になった夫の帰りを待っていた。男も女将の紹介でそば屋で働くようになるが……。

洲崎パラダイス 赤信号 [レンタル落ち]

日常ドラマを淡々と描きながら、腐れ縁の男女を取り巻く人たちが醸し出す人生の無常観が映像に滲み出してくる川島監督らしい作品。ラストがポジティブなのも好印象。

ネオンの灯が川面に反射してきらめく映像も美しいが、今回の白黒映画特集という縛りがなくてぜひ見ておくべき映画だろう。出演者では、宝塚の先輩後輩の新珠三千代轟夕起子が冴えているのも見逃せない。

余談だが、劇中ラジオ商で成功したという人物が蔦枝といい仲になる。これに関連して当時の秋葉原が映し出されて興味深かった。

さて洲崎(現在の江東区東陽あたり)というのは、戦後設置された遊郭のあった街である。文教地区に近いので好ましからずという理由だったのか、根津にあった遊郭が洲崎に移転したものだ。しかし、このタイトルにある「洲崎パラダイス」は映画では一度も登場しない。「橋の向こう」というセリフで登場するだけ。この演出は堅気と色街との世界の隔絶をうまく表現していて素晴らしい。

また本作の三橋達也のように生きれたらいいなぁと妄想してみた。まあ新珠のような女はめったにいないだろうけどね。

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