退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『黒い画集 第二話 寒流』(1961) / 堕ちてゆく銀行マンを池部良が好演しているがひどい話だ

新文芸坐の《精緻と克明 鈴木英夫の手腕》という企画で映画『黒い画集 第二話 寒流』(1961年、監督:鈴木英夫)を鑑賞。松本清張のミステリーの映画化。東宝映画。白黒映画。第二話とあるのは、堀川弘通監督『黒い画集 あるサラリーマンの証言』(1960年)に続く作品のため。

黒い画集 第二話 寒流 [DVD]

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  • 発売日: 2009/10/23
  • メディア: DVD

安井銀行に務める沖野(池部良)は、同期の桑山常務(平田昭彦)の強い推薦により、池袋支店長に大抜擢される。赴任後、大口融資先の料亭の女将・奈美(新珠三千代)と親密な仲になる。しかし桑山常務が横恋慕して、事業拡大の野望のため常務に乗り換えた奈美は沖野に冷たくあたるようになる。ある日、沖野は桑山常務から突然、宇都宮支店行きの言い渡され、出世コースから外されて寒流に流される……。


「黒い画集 寒流」(公開年月日 1961年11月12日) 予告篇

冴えた映像美の連続に緊張感が漂う演出は、鈴木英夫らしいプログラムピクチャーとして楽しめるが、「寒流」といえば堀川版のほうがよくできているように思う。

策を弄するもすべてが裏目に出てどんどん堕ちてゆく銀行員を演じた池部良もよいが、個人的には女癖が悪く一癖ある常務役の平田昭彦が気に入った。平田昭彦といえば、特撮映画の科学者や戦争映画の参謀など無味無臭のエリートを演じることが多く、真面目な役ばかりのイメージがあったので、今回のような人間臭い役は新鮮だった。

いまの感覚なら、最後は半沢直樹のように主人公が大逆転するのだろうと期待するだろう。しかし、そうして逆転劇はなく無力感と絶望感のなかで映画が終わる。考えてみれば、愛人の料亭の女将を上役に奪われて、宇都宮に左遷され、復讐をはかるも失敗する話で、救いようがないひどい話だ。フィルム・ノワールとも言えるが、当時の観客は、この映画を見て観客は面白かったのだろうか。

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余談だが、今回池袋の名画座で見たが、主人公が池袋支店長になり、今後発展が期待されるエリアとして劇中に池袋が登場するのはちょっと面白かった。当時の池袋の映像もあったのだろうが、さすがにどこなのかさっぱりわからない。最近、近くに竣工した豊島区役所を見上げると、場末だった池袋も立派になったなと思ったものだ。

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