新文芸坐の恒例企画《気になる日本映画達2017》で映画『武曲 MUKOKU』(2017年、熊切和嘉監督)を鑑賞。藤沢周の小説『武曲(むこく)』の映画化。主演は綾野剛。公開時にユーロスペースで予告篇を見てからずっと見たかった作品。
- 発売日: 2017/12/06
- メディア: Blu-ray
現代の鎌倉を舞台にした剣道劇。幼い頃から剣道の師範(小林薫)に鍛えられた研吾(綾野剛)は剣の才を発揮するが、父との確執から生きる気力をなくし荒んだ日々を送っていた。そうしたなか、研吾のもうひとりの剣の師である光村師範(柄本明)は、研吾を救済するため、天才少年・羽田(村上虹郎)を見出し、研吾のもとに送り込む。
撮影や美術は雰囲気が出ていて、道場でのケンカの場面やクライマックスの暴風雨のなかの死闘はよく描けているが、肝心のテーマがよくわからない。
フロイトで言うところの、研吾の「原父殺し」が映画の肝なのだろうが、父子の確執が描き方が弱いように思う。そのため研吾と父親との確執の末に起こる立会いで起こる悲劇が伝わってこない。
また研吾と羽田が、命を賭けた死闘を演じる必然性もよくわからない。なんでふたりは戦っているのかなと思ってしまう。とくに羽田の人物描写が薄いのが気になる。被災者という設定だが必要だったのか。せっかく片岡礼子が母親役(メガネ萌え)で出演しているのだから、生い立ちや日常を丁寧に描いてほしかった。
さらにラストで師範が渡す父親の遺書に涙する研吾が描かれるが、なんでこのタイミングなのか意味不明。自堕落な生活を送っているときに遺書を見せればいいのにと思ってしまう。また遺書ぐらいで研吾がすっかり改心してしまうのも腑に落ちない。
映画のプロットというか話そのものに納得できない点が多いなか、綾野剛の熱演はすごい。肉体をしっかりとつくってきてるし、決闘後に憑き物が落ちたように清々しい面相に変わるあたりもたいしたものだ。
余談だが、前田敦子がパンツ丸出しにするシーンには驚いた。吹き替えかもしれないが、なぜ端役なのに出演を了承したのだろう。監督に義理でもあったのだろうか。お見逃しなく!