高野文子の表紙画を見つけて手にとると小説家・新井素子の囲碁の本だった。「サルスベリがとまらない」とあるが囲碁の入門書ではなく、夫婦で囲碁を始めたという筆者のエッセイ集。なので、この本を読んでも囲碁は強くなりません(汗)。
- 作者:新井 素子
- 発売日: 2018/03/20
- メディア: 単行本
冒頭、コミック『ヒカルの碁』を読んで囲碁を始めたとあった。ヒカ碁世代などといわれる、子どものとき『ヒカルの碁』を読んで囲碁を始めたというプロ棋士がいる。しかし大昔、コバルト文庫などで新井素子の作品を読んでいたので、「えっ、世代的にどういうこと?」と思ったが、40歳を過ぎて囲碁を始めたとわかる。
「社交性ゼロ」などと謙遜しているが、ホームパーティーで囲碁を打てる友人を見つけたり、夫婦で囲碁教室に出かけて合宿にも参加。さらに同業者を集めて同好会をつくるなど非常にアクティブに活動している。交流関係がすごいなぁ。
また驚いたのは大学時代の同級生だったという旦那さんとの夫婦仲が凄まじくよいこと。昔、素子さんの『結婚物語』というラブコメ小説を読んだことがあるが、いまでもこれほど仲が良いとは……。そこにいちばん感銘を受けた。夫婦愛がにじみ出ています。
- 作者:新井 素子
- 発売日: 1986/08/25
- メディア: 文庫
「初心者代表」を自称するだけあって、初心者が体験するであろう「あるある」がよくまとまっていて楽しく読める。さすが文筆家。いい歳になって囲碁を始めた人の体験記はあまり見かけないので貴重ではないか。
ただし、この本で囲碁に興味をもってもらえればさいわい、などとあったが、その狙いが成功したかは疑わしい。たぶん多少でも囲碁を知っていると面白く読める。しかし初心者にはかえってハードルが高く感じたのではないか。
囲碁の普及を考えるだけなら、底辺のヲタクがネット碁やコンピューターを駆使してどんどん強くなっていく姿を見てもらったほうがいいかもしれない。
余談だが、本当にひさしぶりに新井素子の文章を集中的に読んだが、独特の文体のためかひどくなつかしく感じて不思議な読書体験だった。ラノベという言葉すらなかったころの読者だったが、筆者の近著をなにか一冊読んでみようと思ったが、浦島太郎状態でどれがいいのかさっぱりわからない。どうしたものか。