退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』(講談社現代新書、2017年)

日本の人口減少を「静かなる有事」と呼び、警鐘を鳴らす。しかし読み進めていくうちに、「日本、詰んでるな」と諦めの境地になった。

本書は二部構成。前半は、人口減少日本でこれから起きることをデータに基づき時系列で沿って予測。後半は、この問題に対する処方箋を提示する。

前半はデータに基づく予測が年表になっていて、これから起こることを身近に感じることができる。とくに出生率が少しぐらい増加しても人口減に歯止めをかけることができない事実は重要であるが、あまり知られていないのではないか。

また「これから起こること」のなかでとくに驚いたのは、2027年には「輸血用血液が不足」するという予測。人工血液は実現していないため、輸血用血液を献血に依存しているのはよく知られているので、献血する人が減少すればこうなるのは当然であろう。しかし、これほど早く輸血用血液が不足する事態になるとは驚いた。これでは、どれだけ立派な医療施設を整備しても十分な医療が行えない。

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一方、後半の処方箋のほとんどは現実的でないように思えた。例えば、「都道府県を飛び地合併」「第3子以降に1000万円給付」などは現実不可能だろう。しかし常識的な手段では「静かなる有事」に対応できないことの裏返しであるならば、事態はそれだけ深刻ということなのかもしれない。

映画『日本沈没』のなかで、渡老人が集めた学者連中が、日本沈没の有事に際して日本民族にとって「何もしないほういい」と結論を出していた。これからの人口減少で起こるだろう予測を見ていくと、ジタバタしないで「何もしないほうがいい」とすら思える。もう日本は詰んでいる。

巻末近くに、筆者が若い世代に向けた「未来を担う君たちへ」というメッセージが載っていた。これが若い世代にどれだけ響くのかわからないが、若い世代は将来、大変な苦労をすることになるのは間違いない。同情は禁じ得ないが、だれしも生まれる時代は選べないのだから仕方ない。

個人的にはこの「有事」から逃げ切れるかどうか、関心はその一点である。そういうと無責任に聞こえるだろうか。

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