退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】江上治 『あなたがもし残酷な100人の村の村人だと知ったら』(経済界、2015年)

タイトルから分かるように、かつてのベストセラーである池田香代子の『世界がもし100人の村だったら』(2001年)にインスパイアにされたかのか分かりませんが、ハードカバーの絵本のようなかわいい本です。

前半は日本を人口100人の村に喩えてイラストを用いて日本が直面している数々の社会問題を紹介していきます。テーマの選び方が恣意的でいたずらに不安を煽っている印象を受けますが、イラストがキレイなので絵本感覚で引きこまれて読んでしまいました。

絵本パートに続いて、第1部「ぼくらの日本はこんなにも残酷だ!」では各種の統計データを引いて絵本パートよりもより具体的に日本が抱える問題点を挙げていきます。データに基いているのでウソではありませんが、分析が浅くやはり不安を煽るだけの内容に思えます。

そして第2部「これからは3つの資本で生きのびよ!」では、ようやく煽るだけ煽った不安への対処法が示されます。ここでいう3つの資本とは次のとおりです。

  • 自分(ヒト)
  • お金(カネ)
  • 人間関係(カンケイ)

どこかで聞いたような項目ですが、ここでようやくファイナンシャル・プランナーとして本領発揮。残酷な日本で生き延びるためのアドバイスが示されますが、誌面も少なくあまり具体的でないのが残念です。

いちばん残念だと感じたのは「残酷な日本」それ自体を何とか変えようとはせずに、対処法が個人レベルで「いきのびる」ことに終止していることです。利己的にすぎるというとキレイ事に聞こえるかもしれませんが、絵本のような素敵な本には相応しくないと思いました。

最後にイラストも著者が描いたのなら、内容を別にしてもスゴいなと思いながら読んでいましたが、イラストはサカモトセイジという方の手によるものでした。残念ナリ。

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