退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『女の教室』(1959) / 女子医大生たちの青春群像劇

新文芸坐の《大映女優祭 in 新文芸坐》で映画『女の教室』(1959年、監督:渡辺邦男)を鑑賞。恋愛や進路に悩みながらも国家試験を控えた7人の女子医大生を描いた青春群像劇。

田舎の貧しい母子家庭で育った操(野添ひとみ)と、裕福な恵まれた環境の有為子(叶順子)の対照的ふたり。このふたりは、友人でいると同時に学長賞を争うライバル関係にある。

仕事で上京した操の母(浦辺粂子)を偶然居合わせた有為子が東京見物に案内するシーンがなかなかうよかったが、これがこの先の伏線になっている。

とにかく操の母の娘に対するプレッシャーがすごい。爪に火を灯すような暮らしをしながら東京の医大に娘を通わせているのだから仕方ないが、これじゃ娘は堪ったものではない。それでも母の期待に応えて医者になるのだから立派なものだ。

操の母は病床に伏しても学長賞の行方をしきりに心配する。結局、娘の操は学長賞をもらったとウソをついてしまうが、見舞いにきた有為子は空気を読んでウソにつきあってくれる。そのまま真実を知らないままに、操の母は他界する。

皮肉なことに母が亡くなり田舎の足かせがなくなったことで、晴れ晴れとして再度上京することを決意するところで終劇となる。これでいいのかなと思わなくもないが、明るい将来に向かっているので、これはこれでいいのだろう。

寄宿舎に暮らす7人が助け合いながら学業に励む姿は、少しまえの朝ドラ「梅ちゃん先生」を思い起こさせる。しかし尺の都合もあるだろうが、医学部の様子にほとんど触れられないのは残念。講義や実習の様子が見たかった。

大映の二番手女優とも言える、野添ひとみと叶順子を主役に据えて、さらに新人女優たちを出演させたパイロット的な作品だったのだろうか。細かいことでいろいろ言いたいことはあるが、よくできた青春ドラマとして悪くない。