退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『トゥルー・クライム』(1999) / クリント・イーストウッド監督・製作・主演による社会派サスペンス映画

新文芸坐の《ワーナー・ブラザース シネマフェスティバル PART2 クリント・イーストウッド編》で映画『トゥルー・クライム』(1999年)を鑑賞。監督・製作・主演クリント・イーストウッド

トゥルー・クライム [Blu-ray]

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  • 発売日: 2016/09/07
  • メディア: Blu-ray

無実の黒人死刑囚を救うために奔走するベテラン新聞記者・エベレット(クリント・イーストウッド)が、死刑執行が迫るなか死刑執行を阻止できるか、スリリングな展開が手に汗握る。無実の証を掴んでから州知事にの家に急行して、死刑執行中止の知事からのホットラインが刑務所に入るシーンが圧巻。

単純なサスペンス映画ではなく、エンターテイメント性を確保しながら、主人公と死刑囚、そして死刑囚と家族との絆が描かれたヒューマンドラマとして成立させているところが素晴らしい。

刑務所で死刑執行前に死刑囚が家族と対面する場面で子どもがクレヨンがないと騒ぎ出し、所員たちがクレヨンを探し出すという小さなエピソードがなかなかよかった。

また先日、日本の死刑制度を描いた『モリのアサガオ』というコミックを読んでいたこともあり、カリフォルニア州の当時の死刑制度も興味深かった。日本ではある日、突然死刑執行されるのに対し、この映画では執行前に家族との対面が許されていた。また日本では絞首刑だが、この映画では薬殺刑で、しかも報道陣に死刑執行の現場が公開されていた。お国柄なのだろうか。

カリフォルニア州では死刑廃止を問う住民投票が何度か行われている。この映画では死刑制度の是非についての直接の言及はないが、あと一歩で冤罪で死刑になったというストーリーを見ると、あらためて死刑制度には問題があるように思う。


True Crime - Trailer

本作はクリント・イーストウッド監督としてブレイクする前の地味な作品だが、正義感やマイノリティに対する視線は他の作品に共通している。人種差別などアメリカ社会の現実も上手く切り取っていて見ごたえがあった。