退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

コミック「モリのアサガオ」を読了

先日、伊藤淳史主演のテレビドラマを見て感銘をうけたので、郷田マモラの原作コミック「モリのアサガオ」(全7巻)を読んでみた。2004年から2007年まで雑誌「漫画アクション」に連載された、死刑制度をテーマに据えた大人向けの社会派コミック。

コミックを手にしたとき、ちょっと苦手な画風だったので最後まで読み切ることができるか心配だったが、読み始めるとぐいぐい惹き込まれた難なく読み終えた。

構想をかっちり決めてから描き始めたのだろう。コミックの最初の段階から結末が暗示される演出で物語が淡々と進んでいく。

テレビドラマの印象が強かったので、読み始めてまず驚いたのは舞台が大阪になっていたこと。随分と印象がちがっていて戸惑ったが、あらためてドラマを思い起こしてみると、ドラマ化した手腕の見事だと感じた。演のキャスティングを含め実写ドラマ化の成功例と言ってよいだろう。

今回コミックを読んで、やはり刑務官が死刑囚に関わり過ぎているし、明らかに服務規程違反だと思えるシーンはある。また新人の刑務官が、いきなり過酷な死刑囚舎房に配属されることも不自然に思えたのだが、これには一応理由付けがされていた。しかし、キャリアの意向とはいえ私事でそう簡単に人事を左右できるものかとも思うが、あれこれ詮索するのは野暮というものだろう。

クセが強い画風や、字がやたらと多いので読む人を選ぶコミックかもしれないが、死刑制度に正面から向き合った骨太な作品。社会問題を扱うコミックがきちんと成立することが分かり、コミックの可能性を感じさせる作品でもある。

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