上野の東京都美術館で開催中のブリューゲル「バベルの塔」展を見てきました。会期終了直前だったせいか会場内はかなり混雑していまいた。いつもながらどこから集まってくるのやら……。
もちろん目当ては、ピーテル・ブリューゲル1世(Pieter Bruegel the Elder, c.1525/1530-1569)の《バベルの塔》(1563年)です。旧約聖書の中に登場する巨大な塔で、神が人々の言葉を乱してため、人々は混乱し塔の建設を止めて世界各地に散らばっていたとされています。
後世のさまざまな物語に登場する有名な話しであり、中二病の人にもお馴染みの逸話です。幾人もの画家がモチーフにしていますが、ブリューゲルのものは大胆かつ緻密な作品は魅力的です。日本人好みと言えるかもしれません。
実物は初めて見ましたが、思っていたより小さな作品です。緻密な筆致は評判どおりでしたが、熱狂するほどのものだろうかとも正直思いました。
興味深いのは、本物の傍らに東京芸術大学が参加するチームが作成した300%に拡大されたクローンの展示です。おばさんたちが「こっちの方がよく分かるわ」と見入っていました。効果絶大です。
ほかにも〈バベルの塔〉をCGで表現したビデオも上映されており、そのなかでは絵画のなかの作業員やクレーンがアニメーションで動いていました。なかなかよくできていて観客からどよめいていました。必見です。
ほかには、ヒエロニムス・ボス (Hieronymus Bosch, c.1450-1516)の油彩画2点も楽しみにしていました。「奇想の画家」と評されていて、宗教改革運動の影響を受けて現存する絵画が少ない画家として知られています。今回は、《放浪者(行商人)》と《聖クリストフォロス》が来日しました。ちょっと地味ですね。ボスと言えば、いつか《快楽の園》を見てみたいものです。
東京都美術館 ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 ピーテル・ブリューゲル1世《バベルの塔》1568年頃
ボスから《バベルの塔》の流れは納得できるものの、やや苦しい感じがします。手持ちの駒がないので無理やりひとつの展示会を企画したのだろうかとも思います。今回、上野まで行くか最後まで迷いましたが、結局見に行くことにしたので、その意味では企画側の勝利と言えるかもしれません。
やや「釣られた」感はありますが、《バベルの塔》は一度は実物を見ておく価値はあるでしょう。