新文芸坐で『ミケランジェロ・プロジェクト』(2014年)を見てきた。監督・脚本・製作・主演をジョージ・クルーニーが務める。原題はThe Monuments Menで、大戦末期ナチスに奪われた美術品を奪還するため、芸術の専門家で結成された特殊部隊「モニュメメンツ・メン」の活躍を描く実話に基づく作品である。
- 出版社/メーカー: 松竹
- 発売日: 2016/04/06
- メディア: Blu-ray
どちらかと言えば地味な作品で映画を見て高揚感を得るような作品ではない。ジョージ・クルーニーを始めとし、マット・デイモン、ビル・マーレイなどの俳優陣は豪華だが映画の出来栄えにあまり寄与していないのは、登場人物が多くてそれぞれの人物描写が十分でないせいだろう。
多くの映画スターたちが出演しているという点では『ナバロンの要塞』のような往年の戦争映画を思い起こすが、現代の映画としては演出が散漫でテンポも悪いのでやや退屈だ。
そもそも映画の時代背景についての知識が十分でないことも映画を今ひとつ楽しめない原因かもしれない。
劇中にオーストリアのリンツに建築計画があった「総統美術館」の模型が登場する。画家を志望していたヒトラーは美術品に対する執着が強く、支配地域の美術品を強奪して自分の美術館に収蔵しようとしていたことが語られる。
それを見て私などは「美術品は誰が持っていてもいいじゃん」「大英博物館だって強奪品ばっかりじゃん」と思ったものだ。しかし映画のなかに、ヒトラーには退廃的だとみなされていたピカソの絵画がドイツ兵に焼かれたり、ドイツ将校が美術品を隠匿していたりする描写があると、そう簡単なものではないということが分かる。
この作戦でどのくらいの美術品が救われたか知らないが、いま東京にやってくる美術品のなかにも救われた美術品が含まれているかもと思うと感慨深い。この映画は美術ファンの方が楽しめるのかもしれない。
ちなみに邦題の「ミケランジェロ・プロジェクト」は、ナチス奪われた美術品の目玉であるミケランジェロ作「聖母子像」に由来しているようだ。この彫刻はベルギーのブルージュの聖母教会にある。ちなみにイタリア国外でミケランジェロの彫刻(完成作)があるのはブルージュを含め3か所だけとのこと。
余談だがケイト・ブランシェットが、ナチスの占領下に置かれた美術館で働きながら美術品の流れを記録していた秘書を演じているが、オリジナルのポスターには登場しないが、日本版にはちゃっかり登場している。その間に何があったのか気になる。