会期が押し迫ってきたなか、先日、森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ)で開催中の「大エルミタージュ展」に行ってきました。
エルミタージュ美術館は、かつて帝政ロシアの都だったサンクトペテルブルクにあり、エカテリーナ2世(1729-1796)が取得したコレクションに始まり、ロマノフ王朝歴代の皇帝が国家の威信をかけて収集した美術品を所蔵する世界屈指の美術館です。
そもとも「エルミタージュ(仏:Ermitage)」というのはフランス語で「隠れ家」という意味ですが、いまやそうした規模をはるかに超えた巨大な美術館になっています。
大エルミタージュ美術館展 森アーツセンターギャラリー 展示室映像
今回はエルミタージュ美術館のなかから、副タイトルに「オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち」とあるように、主に16世紀~18世紀あたりのルネサンス・バロック・ロココ期の欧州各国の巨匠たちの作品を集めた展覧会になっています。まあ超目玉の作品はないもの、各国の巨匠たちの作品を広く鑑賞できる展覧会と言えるでしょう。
会期末なので混んでいるかと思いましたが、待ち時間はほとんどなくてラッキーでした。
会場に入ると、ドーンとウィギリウス・エリクセン《戴冠式のローブを着たエカテリーナ2世の肖像》が迎えてくれます。写真撮影可となっていて、入り口が混雑して迷惑な気もしますが、最初の作品としてはインパクトがありまます。
会場は国・地域別に分類・章立てされて展示されています。分かりやすい演出ですね。各章はつぎのとおりです。
- イタリア(ルネサンスからバロックへ)
- オランダ(市民絵画の黄金時代)
- フランドル(バロック的豊穣の時代)
- スペイン(神と聖人の世紀)
- フランス(古典主義的バロックからロココへ)
- ドイツ・イギリス(美術大国の狭間で)
ティチアーノやクラーナハなど、最近来日して美術展に足を運んだ画家の作品はなんとなく覚えていて目が行くのは不思議な気がしました。ちょっと面白いと思ったのは、フランドルの章の作品たちです。17世紀に活躍したルーベンスの影に隠れがちですが、ダーフィット・テニールス(2世)《厨房》、フランス・スネイデルス《鳥のコンサート》がよかった。それぞれ鳥獣戯画のような趣があります。
展示内容は教科書的で味気ない気もしましたが、「オールドマスター」を楽しむという目的は達成されていたように思います。ただロシアの西欧文化へのコンプレックスが丸出しにも思えました。当時のロシアの美術品はどうだったのか気になります。
また個人的にはエルミタージュ美術館が、ロシア革命後のソ連政府により、またソ連崩壊後のロシア政府により、それぞれそのように運営されていたかは気になるところです。少なくとも現在は一大観光スポットとしてロシアの外貨獲得に一役を買っているのは間違いないようです。