退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ザ・コンサルタント』(2016) / 「必殺仕事人」のような映画かと思ったが背後に重いテーマがあった…

新文芸坐で映画『ザ・コンサルタント』(2016年、監督:ギャヴィン・オコナー)を鑑賞。ベン・アフレック主演のアクション映画。原題はThe Accountant。

会計コンサルタントを表の顔に持つ主人公が、裏では暗殺を請け負う凄腕のスナイパーという、「必殺仕事人」のようなアクション映画かなと気楽に見に行った。確かにアクション映画としても十分楽しめるが、背後にある主人公の生い立ちにまつわる重たいテーマがより心に残った。

田舎町で会計コンサルタントとして働くクリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)が、ある大企業の財務調査を引き受けることになる。そこで重大な不正を見つけるが、依賴を一方的に打ち切られ、大きな事件に巻き込まれ組織に命を狙われるようになる。しかしウルフは、ただの会計士ではなく凄腕のスナイパーだった。反撃に出たウフルは組織を壊滅させて、別の街に去っていく。


The Accountant Official Trailer #1 (2016) - Ben Affleck Movie HD

これだけだとありふれたアクション映画のようだが、ウフルが驚異的な戦闘能力を身につける生い立ちがユニーク。自閉症だったウルフの将来を危惧した父から、少年期から徹底的に戦闘技術を仕込まれてたというもの。虐待ともとれる描写もある。

このあたり実際に自閉性に苦しでいる人たちはどう思うのだろうか。自閉性でも鍛えれば卓越した能力を身につけることができるという間違っていたメッセージを送ることになるのではないか。かなりセンシティブな話になっているように思う。

この自閉性を背景に持つヒーローの登場シーンがよくできている。経営に行き詰った農業の老夫婦に節税策をアドバイスする場面で、有能なコンサルタントのはずなのにコミュニケーションが上手くできない主人公が巧みに描かれていて感心した。

またヒロインの財務調査を依賴した企業の担当者・デイナ・カミングス( アナ・ケンドリック)とウルフの交流も興味深い。ヒロインとしては決してゴージャスじゃないし、むしろぶさかわいいというヒロインだが、ふたりともコミュ障で似た者同士なのが興味深い。

ラストでウルフが街を離れるときに美術を専攻していたダイナにジャクソン・ポロック(Jackson Pollock, 1912-1956)の抽象画を残していく。なかなかのセンスのよさだが、こうした絵画は人類共有のものなので秘蔵しないで美術館で公開してほしいなぁと思った次第。

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