ここ十年ぐらい、東京にフェルメールやレンブラントの作品がやってくる機会が多かったと思いませんか。200年の歴史をもつアムステルダム国立美術館の創立以来の全面改修がその一因のようです。
このドキュメンタリー映画は、2004年から始まった美術館の大改修をめぐる騒動を描いた作品です。さまざまな理由により工事は中断を重ね、再オープンは当初の計画から大幅に遅れることになります。
最近はグダグダっぷりが目立つ日本の実務家たちですが、さすがにこうはならないよなと思いながら鑑賞しました。最初、これがオランダのお国柄なのかとも思いましたが、館長が改修計画が頓挫したことに嫌気が差したのか突然交代したのを見ると、オランダでも異常事態だったようです。
いちばん印象深かったのは、美術館を貫く公道の扱いです。市民たちが「自転車が通りにくい」と大騒ぎします。自転車と美術館のどちらが大切なのか一目瞭然のようですが、なんと自転車利用者側の要求が通ってしまいます。「自転車王国オランダ」の面目躍如。これこそお国柄でしょう。
ほかにも関係者たちの思惑が錯綜する様子など美術館の舞台裏をあますことなく見せてくれます。日本でも計画通り進まない公共事業はいろいろあるはずですが、こうしたドキュメンタリー映画を撮れることに、オランダの懐の深さを感じます。
関係者はさぞたいへんだったでしょうが、おかげで東京で収蔵品を見る機会に恵まれのは僥倖というべきでしょう。あたらめて運が良かったと感謝したいと思います。