退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】小川洋『消えゆく「限界大学」:私立大学定員割れの構造 』(白水社、2016年)

「限界大学」とは恒常的な定員割れを引き起こし、人材的にも財力的にも大学を経営するだけの能力に欠ける、文字どおり弱くて小規模な弱小私大のことを指す。

消えゆく「限界大学」:私立大学定員割れの構造

消えゆく「限界大学」:私立大学定員割れの構造

  • 作者:小川 洋
  • 発売日: 2016/12/28
  • メディア: 単行本

本書では統計データを用いて、私立大学の定員割れの実態、そのメカニズムを明らかにしていく。ユニークなのは短期大学についての分析で、急速に大学数が増えてた背景に短大の四大化があることを示したうえで、その学校経営の実態にまで言及している。なるほど、かつて合コンした短大が四大になっていたりする。

2018年以降、18歳人口が減少傾向に入るため、私立大学の定員割れが加速し、経営困難校の公立移管や統合が進み、多くの私立大学の閉校に追い込まれるのは避けられない。

こうした厳しい環境でも大学改革に成功した事例も紹介されているのも興味深い。とくに地方でも地域に密着して成功している大学ある一方で、都市部にあっても地域とのつながりが薄く、有力大学との厳しい競争にさらされている大学もある、というのはなるほどと思った。

今後、大学の淘汰が進むだろうが本書で背景を知っておくと少しちがった見方ができるかもしれない。

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