DVDで映画『インターミッション』(2013年、監督:樋口尚文)を鑑賞。2013年3月に閉館した老舗映画館「銀座シネパトス」を舞台にした群像劇。秋吉久美子、染谷将太主演。
映画館の閉館に合わせて撮られた内輪向けのプライベートフィルムかなといった趣の映画。観る人の銀座シネパトスへの思い入れの度合いによって感想はまったく違うだろう。一度も行ったことがない人には見ていてちょっとツライかもしれない。
監督の人徳の賜物なのか、香川京子、竹中直人、佐野史郎など豪華なキャストが出演している。さらに、ひし美ゆり子や畑中葉子、中川安奈などの懐かしい女優たちの顔も見ることができる。とくに中川は館内で刃物を振り回す派手な役でひときわ目立っている。
私自身は銀座シネパトスのレイトショーにずいぶん通った。すでに社会人になってからのことである。東宝の特撮映画や70年代のプログラムピクチャーなど、この映画館で初めて見た作品も多い。一本立ての上映でコスパは悪かった。
地下鉄の音や振動が館内に伝わるなど環境は劣悪な映画館だったが、銀座なのに気取ったところがなく妙に落ち着く場所だった。閉館に際して「老朽化と耐震性の問題のため」と聞いて、たしかに地震はまずいなと思った記憶がある。
また内装を改装して赤い座席になったときは随分と派手な座席にしたと思ったが、この映画ではこの赤が際立っていた。この映画のために赤の座席にしたのかと思うほどで、実物よりかなり高級な映画館に見える。
そして館内だけでなく映画館のあった地下通路の様子もよく撮れている。通路には映画館のほかに居酒屋や理髪店があった。その居酒屋の店内では竹中直人のアドリブが炸裂していて、この映画の見どころのひとつになっている。いつか入ってみようと思っていた居酒屋だったが、その機会はついになかった。惜しいことした。
DVDには40分を越える特典映像が収録されていて、出演者のコメントや撮影風景を見ることができて、こちらもなかなか面白い。本作の公開時に予告編を見たときは、「これじゃない」と思って映画館で見ることはなかったが、数年後にDVDで見て銀座シネパトスが映像に残って本当によかったと思った。