《新文芸坐セレクション 絶対に観てほしい時代劇 新文芸坐が自信を持ってお贈りする問答無用の20本!》で、映画『十一人の侍』(1967年、監督:工藤栄一)を鑑賞。映画『十三人の刺客』(1963年)で確立された「集団抗争時代劇」という新ジャンルに分類される一作。白黒映画。
「バカ殿モノ」というジャンルがあるか分らないが、理不尽な行状を繰り返す暴君を刺客が討つ話。映画『十三人の刺客』と同工異曲だが、『十三人の刺客』の方が面白い。
館林藩主・松平斉厚(菅貫太郎)の傍若無人の振る舞いをたしなめた隣藩の忍藩主がその場で射られて殺される。忍藩は幕府に訴状を送るが、斉厚が将軍の弟であることから忍藩に非があるされ、逆に忍藩は取り潰しに追い込まれる。
義憤にかられた忍藩士たちは、仙石隼人(夏八木勲)をリーダーに暗殺団を結成し斉厚暗殺を目指す。ついに暗殺計画が決行され豪雨のなか見事斉厚を討ち取るという話。
騎馬隊を仕立てて暗殺団をかわしもう少しで領内に逃げ込めるのに農家で休息するバカ殿ぶりが笑いどころ。その後、暗殺団に追いつかれ豪雨のなかの壮絶な斬り合いになるクライマックスは必見。
腑に落ちないのは、斉厚が討たれると幕府は態度を一変させて忍藩取り潰しを白紙に戻すという顛末。テロップには「衝撃を受けた」という出るのだが、どうも納得できない。
ちょっと面白かったのは、脱藩して刺客になった隼人が暗殺団の紅一点・ぬい(大川栄子)と江戸でいちゃいちゃしているところに、妻・織江(宮園純子)が訪ねてくるところ。すわ修羅場かと思いきや何ごとも起きないがシチュエーションが面白かった。
ちなみ併映は『大殺陣』(1964年)でどちらも工藤監督による同じ傾向の作品の二本立てだったが、正直後半やや飽きた。別のタイプの作品を組み合わせてプログラムをつくってほしかった。
【関連記事】