なぜシャープが凋落したのかを描いた衝撃の企業敗戦ノンフィクションという触れ込みだったので読んでみた。
この問題については自分なりに追いかけてきたつもりなので、「一本足打法」や「すり合わせ」など、どこかで聞いた話が多く、装丁が立派なわりには内容が薄い印象を受けた。それでも図表が非常に分かりやすく複雑な事象についての理解を助けてくれるのは美点だろうか。
しかし、肝心のなぜシャープがここまで凋落したのかという本質的な理由についての言及がほとんどない。たしかに経営学の視点から様々な問題を指摘しているのは傾聴の価値があるが、それがなぜそうした意思決定が行われたのか、他に経営上の選択肢はなかったのかという点にはあまり触れられていない。
そればかりか、筆者は「この状況ではこの経済判断は無理もなかった」と旧経営陣を何度も擁護する始末。その指摘が的を得ているのか分からないが、経営者たるもの結果責任が問われるとすれば、その破綻の責任を大部分は経営者に帰すと言わなくてはならないだろう。
つまり優秀な経営者が会社の舵取りをしていれば経営破綻を回避できたのだろうか、それとも誰が経営者でも経営破綻は不可避だったのかということである。今日、CEOへの高額報酬が問題になることもあるが、優秀な経営者であれば今回の経営破綻を避けられたとすれば、年間10億円程度の報酬は安いものかも、とも思ってみた。
その意味で、この本は「なぜシャープが凋落したのか」という疑問には答えてくれておらず、問題の本質に迫っているとは言いがたい。